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7月22日の世界の昔話 オオカミ男


福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 7月の世界昔話


7月22日の世界の昔話



オオカミ男



オオカミ
イギリスの昔話 → イギリスの国情報


♪音声配信


 むかしむかし、ある村に、ハンスとクンツという、人のよいお百姓(ひゃくしょう)さんがすんでいました。
 ある日のこと、二人はたきぎをひろいに森へ出かけていきました。
 道のとちゅうで、二人は一人の男にであいました。
「こんにちは。あなたがたは森へいくのですか? わたしも、おともさせてくださいよ」
 男はたきぎをしばるつなをもっていたので、二人はすっかりしんじて、
「ああ、いいとも。いっしょにいきましょう」
と、いいました。
 男はキバのようなするどい歯をして、こわい目つきをしていたのですが、人のよいハンスとクンツは、男にしんせつにしてあげました。
 そして楽しく話をしながら、森まで歩いていきました。
 さて、森についた三人は、さっそくたきぎをひろい集めて、たばにしていきました。
「さあさあ、これだけ集めればじゅうぶんだ。そろそろ帰りましょうか」
 三人は重いたきぎをせおい、あせをふきふき歩きました。
 やがて、ひろい野原にさしかかりました。
「ああ、あつい、あつい。あせがびっしょりだ。どうです。たきぎをおろして、このあたりで休みませんか?」
 ハンスがいうと、男も答えました。
「まったく、重たくてかなわん」
 みんなは大きな木の下で、ひと休みすることにしました。
 遠くの方に、五、六頭のウマが、子ウマを連れて草を食べているのが見えました。
「少し、昼寝でもしませんか?」
「ああ、いいですね」
 ハンスもクンツも賛成しました。
 ハンスはすぐにねむってしまい、クンツもウトウトしていた、その時です。
 後ろの方で、ガサガサと音がしたのです。
(おや、何の音だろう?)
 クンツは寝返りをうつと、そっと、うす目で音のする方を見ました。
 ちょうど、男が服を脱いでいるところでした。
 そして裸になった男は、たちまち灰色のおそろしいオオカミになったのです。
 オオカミはウマのいる方へものすごい早さでかけていくと、そこにいた子ウマにとびかかって、あっという間に食べてしまったのです。
「うむ、あまりうまくないウマだったな。まあいい、口直しに、後であの2人の人間を食ってやろう」
 オオカミは口の周りについた血を長い舌でペロリとなめ回すと、人間の姿になって服を着て、なにくわぬ顔で2人を起こしました。
「そろそろ起きて、出発しようか?」
 ハンスは、すぐに起きあがりました。
 クンツは恐怖のあまり、ガタガタとふるえていましたが、オオカミにばれないよう、なんとかふるえをがまんして起きあがりました。
 三人はしばらく道を歩いていましたが、オオカミの男が、とつぜんお腹を押さえて立ち止まりました。
「あいてて! あいてててて!」
 クンツには、その理由がすぐにわかりました。
「やい、オオカミ男め! 子ウマを一頭たいらげれば、誰だって腹が痛くなるさ。さあハンス。逃げるならいまのうちだ!」
「なんだと、おまえたちも食ってやる!」
 オオカミ男は2人を追いかけましたが、お腹が痛くてうまく走れません。
 ハンスとクンツは、なんとかオオカミ男から逃げることが出来ました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日下駄の日
きょうの誕生花 → まつよいぐさ
きょうの誕生日1959年 森公美子(オペラ歌手)




きょうの日本昔話 → 不思議な岩穴
きょうの世界昔話 → オオカミ男
きょうの日本民話 → カエルの袈裟衣
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7月21日の世界の昔話 二本のロウソク


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7月21日の世界の昔話



二本のロウソク



二本のロウソク

アンデルセン童話 → アンデルセンについて


♪音声配信


 むかしむかし、ある家のあるテーブルの上に、二本のロウソクが置かれていました。
 一本は蜜蝋(みつろう)と言って、とても高価で上等なロウソクでした。
 クルクルとねじった細身のデザインが、とってもおしゃれです。
 もう一本はクジラの油から作られた、安物のロウソクでした。
 上等なロウソクと違い、ただ丸めただけのおデブさんです。
 蜜蝋は、自慢げに言いました。
「ぼくは、ほかのロウソクよりも格好良くて、しかもずっと明るく光るんだ。だからきっと、銀のロウソク立ての上に置かれるよ」
 蜜蝋の言葉に、安物のロウソクがため息をつきました。
「いいなあ。ぼくも君みたいに、客間でパーティーに来る人たちを照らしてあげたいよ。でも、僕が行くところは、せいぜい台所さ」
 その時、この家の奥さまがやって来て、安物のロウソクを手に取ると台所に持って行きました。
(やっぱり)
 安物のロウソクは、がっかりです。
 台所には、カゴをかかえた小さな男の子が立っていました。
 そのかごの中には、たくさんのジャガイモと、いくつかリンゴが入っています。
 奥さまが、男の子に言いました。
「さあ、このロウソクも持って行きなさい。あなたのお母さんは、夜遅くまでお仕事をなさるでしょうから、これが役立ちますよ」
 すると、それを聞いたこの家の小さな女の子が言いました。
「あら、わたしだって、夜遅くまで起きているわ。だって今夜は、ダンスパーティーがあるんですもの。わたしも、大きな赤いリボンをつけてもらうのよ」
 安物のロウソクは、お星さまのようにきらきらと目を光らす女の子を見て、
「わあ。何て可愛い子だろう」
と、思いました。
「でも、ぼくはもう二度と、この子には会えない。蜜蝋くんは、きっと女の子とダンスパーティーを楽しむのだろうけど、ぼくは貧しい家に、もらわれていくのだから」
 男の子はカゴにロウソクを入れると、みすぼらしい小さな家に帰りました。
 この家のお父さんは、もう死んでしまって、お母さんが縫い物をしながら三人の子どもを育てていました。
 男の子が、カゴをお母さんに差し出すと、
「まあ、いいロウソクをいただいて」
と、お母さんはとても喜んで、安物のロウソクに火をつけました。
 そのとき、この家の一番下の女の子が入ってきました。
 その子はにこにこしながら、お兄さんとお姉さんのところに行くと、
「あのね、問題だよ。今夜のごちそうは、なーんだ? えへへ。それはね、あったかいジャガイモだよ」
 女の子はうれしくてたまらないというように、可愛い目をキラキラと輝かせました。
 安物のロウソクは、その女の子を見てこう思いました。
「ああ、さっき見た、お金持ちの女の子と同じ目だ。むこうは豪華なパーティーで、こっちはジャガイモのごちそう。だけど、どっちの女の子も同じように幸せなんだなあ」
 やがて、晩ご飯になりました。
「とてもおいしい、ジャガイモだね」
「それに、リンゴまであるんだよ」
「神さま、おめぐみありがとうございます」
 にぎやかな食事がすむと、子どもたちはベッドに入って、お母さんからキスしてもらうと、すぐにすやすやねむってしまいました。
「楽しい夜だったなあ」
 安物のロウソクは、この家族と一緒に幸せな時間を過ごせて、とても満足でした。
「もう蜜蝋くんが、うらやましくないや。みんな、それぞれに幸福があって、自分が幸福と感じられれば、それは幸福な事なんだ。だからぼくは、本当に幸福だ。・・・あっ、お母さんが、縫い物を始めるぞ。よーし、ぼくも頑張らなくちゃ」


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 自然公園の日
きょうの誕生花 → ルドベキア
きょうの誕生日1962年 羽賀研二(タレント)


きょうの新作昔話 → 鬼を退治した男の子
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きょうの世界昔話 → 二本のロウソク
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7月20日の世界の昔話 勇気ある男


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7月20日の世界の昔話



勇気ある男



勇気ある男

ケニアの昔話ケニアの情報


 むかしむかし、ある大きな森のはずれに小さな村がありました。
 この村では小麦の取り入れが終わると、森の向こう側にある町まで小麦を粉にひいてもらいに出かけます。
 ですが、この森には恐ろしいヒョウが住んでいる為、これまでに何人もの村人が食べられていたのでした。


 さて、ある年の事、十二人の男たちが、それぞれに小麦の入った袋をかついで町へ出かけました。
 ヒョウに襲われない様にお互いに気をつけながら町へ行き、袋の小麦を粉にしてもらいました。
 そして十二人の男たちは、また粉の袋をかついで村へ戻っていきました。
 無事に森をくぐり抜けた時、先頭の男が言いました。
「やれやれ、ここまで来ればもう大丈夫だ。よし、十二人ちゃんといるか数えてみよう。一人、二人、三人、四人、・・・十人、十一人」
 先頭の男が一人一人数えてみると、なんと十一人しかいません。
「しまった! 一人足りないぞ」
「そんなはずはない」
 別の男も数えてみましたが、やっぱり十一人です。
 それと言うのも、実は二人とも、自分を数えるのを忘れていたからです。
 これではいくら数えても、一人足りないはずです。
 ですが、誰もその事に気付きません。
「どうしよう? きっと、誰か道に迷って、ヒョウに食われてしまったんだ」
 三番目の男が言いました。
「だから、ちゃんとみんな一緒に行こうと言ったのに」
 四番目の男が言いました。
「そうだよ。追いつくまで待ってあげれば、よかったのに」
 五番目の男が言いました。
「それにしても、おそろしく大きなヒョウだったよ」
 六番目の男が、前に一度だけ見たヒョウの事を思い出して言いました。
「そうさ。それに、すごいキバを持っていた」
 七番目の男が言いました。
「でも、あいつはすごいなあ。武器も持たないで、ヒョウと闘ったんだから」
 八番目の男が言いました。
「本当だ。たった一人で立ち向かっていったんだから、村一番の勇気ある男だよ」
 九番目の男が言いました。
「でも、いくら勇気のある男でも、ヒョウに食われてしまっては、どうにもならないよ」
 十番目の男が言いました。
「そうだな。それを奥さんに伝えるのはつらいなあ」
 十一番目の男が言いました。
「本当に、あいつは勇気があって、それに親切な男だった」
 十二番目の男が、しみじみと言いました。


 そして十二人の男たちは村に帰ると、涙を流しながら、いなくなった仲間の事を話しました。
 村人たちもびっくりして、大騒ぎになりました。
 するとその時、女の子が言いました。
「あら。でも小麦粉の袋は、ちゃんと十二個あるわよ」
 すると、村長さんが言いました。
「では、わしが人数を数えてやろう」
 村長さんは、十二人の男たちを一列に並べると、一人一人指をさして数えました。
「一人、二人、三人、四人、五人、六人、七人、八人、九人、十人、十一人、十二人。おおっ! いなくなった男が戻ってきたぞ」
 それを聞いて、みんなは口々に言いました。
「すごい! 一人でヒョウをやっつけてくるとは」
「そんな勇気のある男が、この村にいたなんて」
「村のほこりだ。お祝いをしよう」
 こうして村人たちはさっそくお祝いをして、この勇気ある男の話しを、いつまでも語り伝えたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日Tシャツの日
きょうの誕生花 → トルコギキョウ
きょうの誕生日1976年 はなわ(芸人)




きょうの日本昔話 → かねのとりい
きょうの世界昔話 → 勇気ある男
きょうの日本民話 → みそ買い橋
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7月19日の世界の昔話 世界一気前のいい男


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7月19日の世界の昔話



世界一気前のいい男



世界一気前のいい男
ロシアの昔話 → ロシアの国情報


 むかしむかし、あるところに、アツムタイという男がいました。
 アツムタイは、お客がくればいつも心からもてなしをして、何かがほしいとねだられれば、おしみなく人にあげてしまう、そんな気前(きまえ)のいい男でした。
 気前のいい男の話はお城にまでとどき、王さまをイライラさせました。
「わしはこの国の王さまだ。よく人にものをやるが、だれ一人として、わしのことを気まえがよいなどとは、いってくれない」
 そこで王さまは、家来(けらい)にいいつけました。
「そんなに気前がよいのなら、風のようにはやいといわれている、男のウマをもらってくるがいい。いくらなんでも、世界一とうわさされているあの名馬を、手ばなすわけはないと思うがな」
 家来はさっそく、アツムタイのところへいきました。
 それは、雪のふる寒い日のことでした。
 ところがこの時、アツムタイの家には、王さまの家来をもてなすごちそうがありませんでした。
 アツムタイは考えて、ウマ小屋にいる世界一はやいという名馬を殺して、家来をもてなしたのでした。
 つぎの朝、家来が王さまの用件をつたえると、アツムタイはなきながら、
「もうしわけございません。じつはあなたさまをもてなすものがなかったので、昨日、そのウマをごちそうしてしまったのです。王さまのおのぞみをかなえてさしあげることは、できなくなってしまいました」
 家来はお城に帰り、アツムタイの気前のよさとけだかい気持ちを、王さまにつたえました。
 すると王さまは、まえよりももっとイライラして、とんでもないおふれを出しました。
「わしより気前のよい男がいるなんて、ゆるせない。アツムタイを殺してその首をもってくれば、どっさりほうびをやるぞ」
 しかし、アツムタイのように気前のいい男を殺そうと思うものは、国じゅうさがしても、たった一人しかいませんでした。
 さて、その一人の男は、くる日もくる日も、アツムタイをさがしまわっていました。
 しかし、見つけることはできません。
 ある日のこと、男はつかれきって、見知らぬ人のテントにとめてもらうことになりました。
 テントの主人は旅の男を心よくむかえ入れ、おいしい食事を用意してくれました。
 そして、気持ちのいい寝床までこしらえてくれたのです。
 つぎの朝、旅の男は主人にいいました。
「わたしは王さまの命令で、アツムタイという男をさがしているのです。どうしたらその男をさがし出すことができるか、いい知恵(ちえ)はありませんか?」
 だまって聞いていた主人は、いきなり外に出ていきましたが、しばらくすると、するどい刀(かたな)をもって帰ってきました。
 そして、旅の男に刀をさし出して、いうのでした。
「お客さま。わたしがおさがしのアツムタイでございます。あなたがわたしの首をほしいといわれるのなら、さしあげましょう。どうぞ、バッサリときりおとしてください」
 旅の男は、ビックリしました。
 まさか、この男がアツムタイだったとは。
 しかし、こまっている自分をとまらせてくれ、食事や飲み物まで用意をしてくれた主人を、とても殺す気にはなれませんでした。
 こうして旅の男は、とうとう王さまの命令をはたさず、お城に帰っていきました。
 そして王さまに、アツムタイのことを報告(ほうこく)したのです。
 すると王さまは、自分のやろうとしたことを深く反省していいました。
「わしはアツムタイのように、自分の首をさし出す気にはとてもなれん。あの男こそ、本当に世界で一番気前のよい男だ」


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日マッターホルン北壁登頂の日
きょうの誕生花 → がま
きょうの誕生日1964年 近藤真彦(俳優)


きょうの新作昔話 → 古い木まくら
きょうの日本昔話 → びょうぶのトラ
きょうの世界昔話 → 世界一気前のいい男
きょうの日本民話 → 打ち出の小づち
きょうのイソップ童話お百姓と木
きょうの江戸小話 → かみなりぎらい


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7月18日の世界の昔話 愛の竪琴


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7月18日の世界の昔話



愛の竪琴



愛の竪琴

ギリシア神話ギリシアについて


 むかしむかし、ギリシアのオリンポスという山には、多くの神さまたちが住んでいました。
 その神さまたちの中に、オルフェウスと名前の、竪琴(たてごと)の上手な若い神さまがいました。
 オルフェウスの弾く竪琴の音色は神さまだけでなく、動物や植物や岩までもが、うっとりと聞きいるほど美しかったそうです。
 そのオルフェウスには、エウリュディケという可愛い奥さんがいました。


 ある日の事、二人は野原へ花をつみに出かけました。
「エウリュディケ、こっちに来てごらん。きれいな花が咲いているよ」
「まあ、どこにあるの?」
 エウリュディケが、オルフェウスの所へ駆け出そうとしたとたん、エウリュディケは足元にいた毒ヘビを、うっかり踏みつけてしまったのです。
 毒ヘビは体をくねらせると、エウリュディケの細い足首に噛みつきました。
「きゃあ!」
 エウリュディケはばったりと倒れて、そのまま動かなくなりました。
「エウリュディケ!」
 オルフェウスが駆け寄って抱き上げた時には、エウリュディケはもう死んでいたのです。
「ああ、何という事だ。エウリュディケ、エウリュディケ」
 オルフェウスは泣き叫びましたが、エウリュデイケは二度と生き返りませんでした。
 悲しみにくれたオルフェウスは、来る日も来る日も竪琴を弾きならして、悲しみの歌を歌い続けました。
 しかしいくら歌っても、愛するエウリュディケを忘れる事は出来ません。
 それどころか、悲しみは深くなるばかりです。
 そんなある日、オルフェウスは決心しました。
「そうだ、死の国に行ってみよう。エウリュディケに会えるのなら、あのやさしい声が聞けるなら、わたしはどんな恐ろしい目に会ってもいい」
 神さまたちの中で死んだ者をよみがえらす事が出来るのは、死の国のハーデス王だけです。
 オルフェウスは仲間の神さまたちに見送られて、死の国へと旅立ちました。
 オルフェウスが死の国への暗い道を何日も進むと、やがて死の国の門へとたどり着きました。
 門の前には、恐ろしい番犬が座っていました。
 その番犬は頭が三つもあって、髪の毛がヘビの化け物です。
「がぅぅ!」
 番犬は、ヘビの毛を逆立てて飛びかかってきました。
「何を、負けるものか!」
 オルフェウスは勇ましく立ち向かっていきましたが、番犬にたちまち組み伏せられてしまいました。
 そして番犬がオルフェウスの喉に噛みつこうとした時、手から滑り落ちた竪琴が風にゆられて、
♪ポロロン
と、鳴りました。
 すると番犬は、
「くーーん」
と、急に大人しくなったのです。
 オルフェウスの美しい竪琴の音色に、心が穏やかになったのです。


 オルフェウスが死の国の城の中へ入って行くと、城の主であるハーデス王が、驚いた顔で尋ねました。
「まだ死んでもいない者が、どうしてやって来たのだ?」
 するとオルフェウスは、竪琴をかなでながら、そのわけを説明しました。
「実は、死んだ妻にどうしても会いたくて、ここまでやってまいりました。ハーデス王、お願いです。どうか妻に会わせて下さい」
 普段なら、死んだ者を生きた者に会わせることなど決してしないのですが、オルフェウスの竪琴の音色を聞いて心が穏やかになったハーデス王は、ゆっくりうなづくとオルフェウスに言いました。
「わかった。エウリュディケを返してやろう」
「本当ですか! ありがとうございます!」
 間もなく暗闇から、エウリュディケが姿を現しました。
 可愛そうな事に、毒ヘビに噛まれた足を痛そうに引きずっています。
「ああ、エウリュディケ!」
 オルフェウスが駆け寄ろうとすると、ハーデス王が大声で止めました。
「待てっ! いいか、地上に戻るまで、エウリュディケの顔を決して見てはならん。この言いつけを守らなかったら、エウリュディケとは二度と会えなくなるからな。わかったな」
「はい、お言いつけは必ず守ります」
 オルフェウスは、ハーデス王に約束しました。
 二人はすぐに、地上に続く道を登り始めました。
 オルフェウスの心は、うれしさではちきれそうです。
(これでまた、エウリュディケと一緒に暮らせるのだ)
 道が険しくなってくると、オルフェウスは後からついて来るエウリュディケが心配でたまらなくなりました。
(ヘビに噛まれた足は、大丈夫だろうか?)
 やがて、地上の明かりが見えてきました。
(よし、もうすぐ地上だ)
 明るい光が満ちあふれる地上へ出たとたん、オルフェウスはエウリュディケの方に振り返って手を差し伸べました。
「エウリュディケ、さあ、つかまって」
 そのとたん、オルフェウスの顔が真っ青になりました。
 何と、エウリュディケの片足が、まだ死の国の暗闇の中にあったのです。
 まだ死の国にいたエウリュディケは、
「さようなら、オルフェウス。わたしを迎えに来てくれてありがとう」
と、悲しい声を残して、再び地の底に吸い込まれて行ったのです。
「ああ、エウリュディケ!」
 再び引き離された二人は、もう二度と会う事は出来ませんでした。
 その後、オルフェウスは竪琴を弾きながら野山をさまよい歩き、悲しみの歌を歌い続けたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日光化学スモッグの日
きょうの誕生花 → マリーゴールド
きょうの誕生日1980年 広末涼子(俳優)




きょうの日本昔話 → ふしぎな和尚さん
きょうの世界昔話 → 愛の竪琴
きょうの日本民話 → かぶと島
きょうのイソップ童話おじいさんと死に神
きょうの江戸小話 → あわてふろしき


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7月17日の世界の昔話 ウサギのツノ


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7月17日の世界の昔話



ウサギのツノ



ウサギのツノ
ザンビアの昔話 → ザンビアの国情報


 むかしむかし、ゾウが宴会(えんかい)を開こうと思いつきました。
 そこでビールやごちそうの用意をすると、けものたちをよんでいいました。
「このビールは、ツノのあるものだけに飲ませてやる。ツノのないものはだめだ」
 けものたちはゾウをこわがっていましたから、みんなおとなしくいうことを聞きました。
 けれども、ウサギは自分にツノのないのがざんねんでなりません。
「おいしいビールだろうなあ。なんとかして、宴会にいく方法はないかな? そうだ、ツノを手に入れればいいんだ」
 ウサギはしげみにかくれて、若いシカがくるのをまちました。
 そしてシカがしげみのそばを通りすぎようとしたとき、シカの背中に飛びのったウサギは、すばやくシカのツノをきりとって、自分の頭にはりつけたのです。
 こうしてウサギは、大いばりでゾウの宴会にでかけていきました。
 ゾウはウサギを見ると、おどろいていいました。
「ウサギのツノが、一番りっぱじゃないか。たいしたものだ。さあさあ、えんりょなく飲め」
 ほかのけものたちも、口をそろえてウサギのツノをほめました。
 ウサギは、ビールをだれよりもたくさん飲みました。
 よっぱらって、フラフラになるほど飲みました。
 そこへとつぜん、年よりのシカがやってきました。
 ウサギは、シカにたずねました。
「おやおや、ずいぶんおそくおいでだね? おじいさんにはツノがないのかい?」
「わしは、おまえがどんな顔をして、ビールを飲んでいるか見物にきたのさ」
と、年よりのシカはこたえて、ウサギのそばにすわりました。
 そして、ウサギのほうにそっとからだをかがめて、ヒソヒソ声でいいました。
「はりつけたものは、はげてしまうぞ」
 お客のけものたちは、シカがウサギにどんなないしょ話をしたのか、知りたがりました。
 ウサギは笑って、こたえました。
「こんなじいさんのことなんか、気にしなくてもいいじゃありませんか。なにね、シカのじいさんはごちそうをたべすぎて、くだらんことをブツブツいってるんですよ」
 年よりのシカはそれを聞いて、こんどは大声でいいました。
「はりつけたものは、はげてしまうさ!」
 ゾウとお客たちは、ウサギのツノをジロジロながめました。
 ウサギはビックリして、ガタガタとふるえだしました。
 そのとたんに、はりつけたツノがはげて、地面に落ちてしまいました。
 ウサギはいちもくさんに、にげていきました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日東京の日
きょうの誕生花 → ぎぼうし
きょうの誕生日鈴木葉月(タレント)




きょうの日本昔話 → 千両箱の昼寝
きょうの世界昔話 → ウサギのツノ
きょうの日本民話 → お化けじぞう
きょうのイソップ童話プロメテウスと人間
きょうの江戸小話 → はりうち


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7月16日の世界の昔話 お茶のポット


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7月16日の世界の昔話



お茶のポット



お茶のポット
アンデルセン童話 → アンデルセン童話の詳細


♪音声配信


「こんにちわ。
 私はお茶のポットです。
 私は陶器(とうき)でできていますのよ。
 注ぎ口は細くて長くてすてきでしょう。
 いつでしたか、どなたかがバレリーナのうでのようと、ほめてくださいましたわ。
 とってのはばの広さはどう思いまして?
 何ともうしましても、陶器は私のように上品(じょうひん)で、しかもおしゃれでなくては。
 なにしろ私は、一流(いちりゅう)の職人(しょくにん)さんが、それはそれはていねいに作ってくださいましたのよ」
 お屋敷の台所で、お茶のポットはいつもじまんしていました。
 でも、聞かされるクリーム入れやさとう入れは、ほめるよりも、もっと別のことをよく言いました。
「ところで、ポットさんのフタはどうされました?」
 そのことを言われると、ポットはだまってしまいます。
 フタは前に一度こわされて、つぎはぎにされ、つぎ目があるのです。
「そうね。
 誰でも悪いところに目がいくものよね。
 でも何と言われても、私はテーブルの上の女王よ。
 だって、のどがかわいている人間を助けてあげることができるんですもの。
 この注ぎ口が女王のしょうこよ。
 クリーム入れもさとう入れも、言ってみればけらいじゃないの」
 そんな、ある日のこと。
 食事のときに誰かがポットを持ちあげたひょうしに、床に落としてしまったのです。
 ポットは床で音をたてて、コナゴナになってしまいました。
「それから私は、まずしい家の人にもらわれて行きましたの。
 そこで土をいれられ、球根(きゅうこん)をうめられましたわ。
 私はうれしく思いました。
 なぜって球根は、私のからだの中でグングンと元気に育ち、芽(め)を出したのです。
 そして、朝をむかえるたびに大きくなり、ある朝見事な花がさきましたの。
 花は娘のようなもの。
 まあ、お礼はもうしてくれませんでしたが、私は幸福でしたわ。
 家の人たちは花を見て、その美しさをほめてくれました。
 誰かを生かすために自分の命を使うって、うれしいことです。
 そのとき初めてそう思いました。
 でも、家の人たちは『こんなきれいな花は、もっとすてきなうえ木ばちにうえたほうがいいね』と、花をつれて行き、私を庭のすみにほうり投げましたの。
 でも、私をかわいそうなどと思わないでくださいね。
 ええ、私には思い出がたくさんあるのですから。
 これだけは、だれにもこわしたり、ほうり投げたりできませんのよ」


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日外国力士の日
きょうの誕生花 → はまひるがお
きょうの誕生日1943年 桂三枝(落語家)


きょうの新作昔話 → 百物語の代金
きょうの日本昔話 → おこぜと山の神
きょうの世界昔話 → お茶のポット
きょうの日本民話 → 逆立ち幽霊
きょうのイソップ童話 → まもり神
きょうの江戸小話 → せんこうそば


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7月15日の世界の昔話 おばあさんの家


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7月15日の世界の昔話



おばあさんの家



おばあさんの家
ドイツの昔話 → ドイツの国情報


♪音声配信


 むかしむかし、海を見おろす丘の上の小さな家で、貧乏(びんぼう)なおばあさんが一人ぼっちで住んでいました。
 おばあさんはからだが悪くて、何年も寝たきりでした。
「暗くなってきたわ。日が暮れるのかしら?」
 おばあさんは、顔を海のほうへ向けました。
「おや? あの雲(くも)・・・」
 水平線の上に、黒い小さい雲が浮かんでいます。
「おじいさんが、よく雲の話をしてくれたけれど」
 なくなったおじいさんは船乗りで、大きい船に乗って、世界じゅうを回っていたのです。
 おばあさんは、ハッとしました。
「たいへん! あの雲はあらしの前ぶれ。きっと、もうすぐ恐ろしいあらしが大波をつれて押し寄せてくる。どうしよう? 町の人に早く知らせないと」
 おばあさんはなんとかして、少しでも早く町の人たちに知らせなければと思いました。
 すると、やせたからだに、ふしぎに力がわいてきました。
 おばあさんはベッドからずり落ちると、動かないからだを引きずって、まどの所まではっていきました。
「町の人たち! あらしがくるよ、早く逃げて!」
 おばあさんは、まどにつかまってさけびました。
 こぶしで力いっぱい、まどの戸をたたき続けました。
 でも、だれも気がついてくれません。
 そうしているうちにも、雲はまっ黒にふくれあがってきました。
 もうすぐ、山のような波がおしよせてくるでしょう。
 そして、町の人たちをひとのみに沖(おき)へさらっていくでしょう。
「ああ、どうしたらいいんだろう?」
 おばあさんは、自分のへやを見回しました。
「そうだわ! ベッドに火をつけましょう。この家が燃えれば、町の人たちはきっととんできてくれる」
 おばあさんは、まよいませんでした。
 ストーブの火をとってきて、ベッドのワラにつけました。
 ワラはたちまち、まっかな火をふき出しました。
「燃えておくれ! 赤く赤く燃えあがっておくれ! 町の人たちが、早く気がつくように」
 おばあさんは煙にまかれながら、やっとのことで家の外へはい出すと、そのまま気を失いました。
 ベッドの火はまどからふき出し、強くなってきた風にあおられて、メラメラと屋根に燃えうつりました。
「火事だ! 丘の上の家が燃えてるぞ!」
 町の人たちが気づいてさけびました。
「火事だ! 火事だ!」
「あの家には、病気のおばあさんが一人で寝ているんだ!」
「早く助けにいこう!」
 町の人たちは口ぐちにさけびながら、丘へ向かってかけ出しました。
 まっ先に丘ヘかけあがってきた人たちが、火の粉をかぶってたおれているおばあさんを安全な場所へうつしたとき、あたりが夜のようにまっ暗になりました。
 おそろしい風がうなり、山のような大波が姿をあらわしました。
 そして、町に住む最後の一人が丘の途中までかけあがったとき、まっ黒い大波が町をおそったのです。
 そのようすを、町の人はふるえながら見ていました。
「おばあさんが、わたしたちを助けてくれたんだ!」
「自分のベッドや、家まで焼いて」
「ありがとう。ありがとう」
 みんなの目に、うれし涙が光りました。
 おばあさんの目にも、同じ涙が光っていました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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7月14日の世界の昔話 金のカラス


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7月14日の世界の昔話



金のカラス



金のカラス

マャンマーの昔話ミャンマーの情報


 むかしむかし、ある村に、夫に死なれた貧乏な女の人がいました。
 女の人には、きれいでやさしい一人娘がいます。


 ある日の事、女の人が娘に言いました。
「お米の入った箱を日なたに干しているから、取られないように見張り番をしていておくれ」
「はい。わかりました」
 娘が米の箱の側に座って番をしていると、どこからか金色のカラスが飛んできました。
「あっ、駄目よ。あっちに行って! しっ、しっ!」
 娘はカラスを追い払おうとしますが、カラスは平気で、箱に入った米を全部食べてしまったのです。
「ああ、家は貧乏なのよ。お米がなかったら、どうしたらいいの」
 娘が泣き出すと、金色のカラスは、
「娘さん、心配しないで。代わりの物をあげるから。夕方、村はずれの大きな木のところへおいで」
と、言うと、どこかへ飛んでいってしまいました。


 夕方、娘が大きな木の下へ行くと、木のてっぺんにある小さな金色の家から、金色のカラスが顔を出して言いました。
「いま、はしごを下ろしてあげるけど、金と銀とブリキのうち、どのはしごがいい?」
「わたしは、ブリキのはしごでいいわ」
 娘が答えると、カラスは金のはしごを下ろしてくれました。
 娘がはしごを登って小さな金色の家まで行ってみると、カラスは夕ごはんの支度をしながら、
「お皿は、金のお皿か、銀のお皿か、ブリキのお皿か、どれがいい?」
と、尋ねました。
 娘が、
「ブリキのお皿でいいわ」
と、答えると、カラスは金のお皿に、おいしいごちそうを山の様に出してくれました。
 娘が食べ終わると、カラスは三つの箱を持って来て言いました。
「きみに、お土産をあげよう。大きい箱と、中くらいの箱と、小さい箱、どの箱がいい?」
「小さい箱でいいわ」
 娘は小さな箱をもらうと、カラスにお礼を言って家に帰りました。


 さて、娘がお母さんの前で小さな箱を開けてみると、中には光り輝くルビーがたくさん入っていました。
 おかげでお母さんと娘は、お金持ちになって幸せになりました。


 さて、この二人の近所に、とても欲張りな母親と娘が住んでいました。
 欲張りな二人は金色のカラスの話を聞くと、自分たちも同じようにルビーがもらいたくてたまりません。
 そこで欲張りな二人は、さっそく日なたに米の箱を出しました。
 すると金色のカラスがやって来て、箱の米を食べ始めました。
 それを見つけた欲張り娘が、大声で叫びました。
「こら! よくもお米を食べたね。代わりに宝物を寄こさないと、ひどい目に会わせるよ!」
 こうして金色のカラスに無理矢理約束させた娘が、夕方に木の下に行ってみると、
「はしごを下ろすけれど、金と銀とブリキのうち、どのはしごがいい?」
と、金色のカラスが聞きました。
 すると欲張りな娘は、
「もちろん、金のはしごだよ」
と、答えると、カラスはわざとブリキのはしごを下ろしました。
 次にカラスは、娘に金と銀とブリキのうち、どのお皿がいいかと尋ねました。
 娘が、
「もちろん、金の皿だよ」
と、 言うと、カラスはわざと、ブリキのお皿で少しのごちそうを食べさせました。
 娘が怒って、
「なんてけちなカラスだろう。もういいわ。早くお土産を持ってきておくれ!」
と、怒鳴ると、カラスは大きい箱と、中くらいの箱と、小さな箱を持ってきました。
「大きい箱と、・・・」
 カラスが説明しようとすると、娘は大きい箱をつかんで、
「大きい箱に、決まっているでしょう!」
と、カラスに礼も言わずに、大きい箱を持って家に帰りました。
 欲張りな娘が家に帰ると、すぐに欲張りな母親が飛んできて娘に言いました。
「よくやったね。隣の家よりも、大きい箱じゃないの」
「当然でしょう。さあ、二人で箱を開けましょう」
  欲張りな娘と母親が、わくわくしながら大きな箱のふたを開けてみると。
「ぎゃあーーーー!」
 二人は叫んで、ブルブルと震え上がりました。
 何と大きな箱の中からは、毒ヘビや毒クモや毒トカゲなどが、次から次へとはい出てきたのでした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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7月13日の世界の昔話 眠れる森の美女


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7月13日の世界の昔話



眠れる森の美女



眠れる森の美女
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♪音声配信


 むかしむかし、ある国のお城で、お姫さまが生まれました。
 王さまは国中の人をよんで、お祝いをしました。
 お祝いには、十二人の魔法使いたちもやってきました。
 だけどただ一人、十三人目の魔法使いだけは、お祝いによばれませんでした。
 じつは、お城には魔法使いたちの使うお皿が、十二枚しかなかったからです。
 お祝いによばれた魔法使いたちは、つぎつぎに進み出て、お姫さまにおくり物をささげました。
「きれいな人に、なりますように」
やさしい心を、持ちますように」
「だれよりもかしこい人に、なりますように」
 そして、十二人目の魔法使いが進み出たときです。
 城中に、おそろしい声がひびきました。
「よくもわたしをのけ者にしたね。姫よ、わたしのおくり物を受けるがいい。おまえは十五才の誕生日に、つむ(→糸つむぎの道具)にさされて死ぬのだ」
 十三人目の魔法使いは、そういうと消えてしまいました。
「大変だ! どうすればいいのだろう」
 人々は、大さわぎです。
「待ってください。まだ、わたしが残っていますわ」
 そういったのは、十二人目の魔法使いでした。
「お姫さまは死にません。つむにさされても、百年の間眠るだけ。それからりっぱな人のキスで目を覚まし、その人と結ばれるでしょう」
 だけど、王さまは心配でたまりません。
「国中のつむを1つ残らず集めて、燃やしてしまえ! そして今後、つむを作ることも使うことも禁ずる」
 命令を受けた人々は、つむを集めて火をつけました。
「これでよし。つむがなければ、姫もさされはしないだろう」
 王さまも人々も、ホッとしました。
 やがてお姫さまは、すくすくと大きくなって十五才になりました。
 ある日の事です、お姫さまは一人でお城の中を歩いていました。
 いくつもの階段をのぼって見つけたのは、小さな入り口です。
「まあ、こんなところに部屋があったなんて。・・・ここには、何があるのかしら?」
 お姫さまは、古ぼけた部屋に入っていきました。
 中にいたのは、見たことがないおばあさんです。
 おばあさんは糸をつむぐ車を、ブンブンと回していました。
「まあ、おもしろそうだこと。おばあさん、ちょっとかしてくださいな」
「いいともいいとも、さあ、手をだしてごらん」
 何も知らないお姫さまは、つむぎ車に手をのばしました。
 そのとたん、つむぎ車のつむが、お姫さまの手をさしてしまったのです。
「イッヒヒヒヒー! うまくいったよ」
 おばあさんは笑い声を上げると、どこかへ消えてしまいました。
 実は十三人目の魔法使いがおばあさんに化けて、お姫さまを待っていたのです。
 つむの毒がお姫さまの体にまわる前、十二番目の魔法使いの魔法が始まりました。
 お姫さまは魔法の光につつまれると、その場にバッタリと倒れて、そのまま眠ってしまったのです。
 魔法の光はお姫さまだけでなく、お城全体をつつみました。
 そのとたんに、お城の時計がピタリと止まりました。
 ネズミを追いかけていたネコは、屋根の上で眠ってしまい、料理番は料理のとちゅうで眠りました。
 いえ、それだけではありません。
 なんと空を飛んでいるトリも空に浮いたままで眠り、料理をあたためていた火も眠ってしまったのです。
 なにもかもが眠ったお城の回りで、イバラだけがのびていきました。
 そして長い年月がすぎたある日、りっぱな王子さまがイバラのそばへやって来ました。


イバラと王子さま


「ここがイバラの城か。ここには美しい姫が眠っているという話だが」
 王子さまがイバラを切り分けて中に入ろうとすると、トゲだらけのイバラがスルスルと動いて、王子さまに襲いかかりました。
 王子さまは襲いかかるイバラを切り落としますが、いくら切り落としてもきりがありません。
 とうとうイバラに囲まれた王子さまは、死を覚悟しました。
 ところがそのとき、イバラはみるみるちぢんでいって、 お城へ続く道が現れたのです。
 ちょうど今日が、百年目だったのです。
 王子さまはお城へ行くと、お姫さまが眠っている部屋に入りました。
「なんて、きれいな人だろう」
 お姫さまを見つけた王子さまは、思わずキスをしました。
 すると、百年眠りつづけていたお姫さまの目が、パッチリと開いたのです。
 いえ、お姫さまだけでなく、お城中が眠りからさめました。
 ネコはネズミを追いかけはじめ、料理番はナベを火にかけました。
 空を飛んでいたトリも、また飛び続けました。
 全ての事を知った王さまは、城中のみんなにいいました。
「みなの者、魔女(まじょ)ののろいはとけたぞ。さあ、結婚式の準備をするのだ。大急ぎでな」
 そしてお姫さまと王子さまは結婚して、幸せにくらしました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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きょうの誕生日 → 1977年 鈴木紗理奈(タレント)




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