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3月31日の世界の昔話 シンデレラ


福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 3月の世界昔話


3月31日の世界の昔話



シンデレラ



シンデレラ

ペローの童話 → ペローの童話の詳細

シンデレラのぬりえ


 むかしむかし、とても美しくて、やさしい娘がいました。
 でも、お母さんがなくなってしまい、お父さんが二度目の結婚をしたので、娘には新しいお母さんと二人のお姉さんができました。
 ところがこの人たちは、そろいもそろって、たいへんいじわるだったのです。
 新しいお母さんは、自分の二人の娘よりもきれいな娘が気に入りません。
「まあ、あんたは、なんてかわいくない娘でしょう」
 三人は、つらい仕事をみんな、娘に押しつけました。
 寝床は粗末(そまつ)なわらぶとん。
 着る物は、つぎあてだらけ。
 おふろに入ることもゆるしてもらえず、娘のあたまに、いつも、かまどの灰が付いていました。
 そこで三人は、娘をシンデレラ(→灰かぶりの意味)とよんだのです。
 かわいそうなシンデレラでしたが、それでも、お姉さんたちの何倍も何倍も美しいのでした。
 ある日のこと、お城の王子さまが、お嫁さん選びの舞踏会(ぶとうかい)を開くことになり、シンデレラのお姉さんたちにも、招待状が届きました。
 お姉さんたちは、大はしゃぎです。
 シンデレラはお姉さんたちのしたくを手伝い、ニッコリ笑って送り出しました。
 それから悲しくなって、シクシクと泣きだしました。
「わたしも、舞踏会にいきたいわ」
「泣くのはおよし、シンデレラ」
「・・・? だれ?」
 シンデレラの目の前に、妖精(ようせい)が現れました。
「シンデレラ、おまえはいつも、いい子ですね。ごほうびに、舞踏会へ行かせてあげましょう。まず、畑でカボチャを取っておいで」
 妖精が大きなカボチャをくりぬき、つえでたたくと、なんと、金の馬車(ばしゃ)になったではありませんか。
「まあ、立派な馬車。すてき」
「まだまだ、魔法はこれからよ。さてっと、馬車を引くには、馬が必要ね。その馬は、どこにいるのかしら・・・。ああ、ネズミとりには、ハツカネズミが六匹ね」
 妖精は、つえでハツカネズミにさわりました。
 するとみるみるうちに、りっぱな白馬になりました。
 別のネズミとりには、大きな灰色ネズミが一匹いました。
「このネズミは・・・」
 妖精がつえでさわると、今度は、おひげがりっばな、太っちょ御者(ぎょしゃ→馬車を操る人)に早変わり。
「シンデレラ、つぎはトカゲを六匹集めておくれ」
「はい」
 シンデレラの集めたトカゲは、お供の人になりました。
「ほらね、馬車に、白馬に、御者に、お供。さあシンデレラ。これで、舞踏会に行くしたくができましたよ」
「うれしい。ありがとう。・・・でも、こんなドレスじゃ」
「うん? そうね、忘れていたわ」
 妖精がつえを一ふりすると、みすぼらしい服は、たちまちかがやくような美しいドレスに変わりました。
 そして、小さくてすてきな、ガラスのクツもくれました。
「楽しんでおいで、シンデレラ。でも、わたしの魔法は十二時までしか続かないの。決してそれを忘れないでね」
「はい、行ってきます」
 さて、お城の大広間にシンデレラが現れると、そのあまりの美しさに、あたりはシーンとしずまりました。
 それに気づいた王子が、シンデレラの前に進み出ました。
「ぼくと、おどっていただけませんか?」
 シンデレラは、ダンスがとても上手でした。
 王子はひとときも、シンデレラの手をはなしません。
 楽しい時間は、あっというまにすぎて、ハッと気がつくと、十二時十五分前です。
「あっ、いけない。・・・おやすみなさい、王子さま」
 シンデレラはていねいにおじぎをすると、急いで出ていきました。
 ですが、あわてたひょうしに階段にひっかかって、ガラスのクツがぬげてしまいました。
 でも、取りに戻る時間がありません。
 シンデレラは待っていた馬車に乗って、急いで家へ帰りました。
 シンデレラが帰った後も、王子は美しいシンデレラを忘れることができません。
「ぼくは、このガラスのクツの持ち主と結婚する」
 そこでお城の使いが国じゅうを駆け回り、手がかりのガラスのクツが、足にぴったりあう女の人をさがしました。
 使いは、シンデレラの家にもやってきました。
「足が入れば、王子さまのお嫁さんよ」
 二人のお姉さんたちは、足をギュウ、ギュウと、押しこみましたが、どうしても入りません。
「わたしもはいてみて、いいでしょうか?」
 シンデレラがたずねると、お姉さんたちは大笑いしました。
「なにをバカなことをいっているの。あたしたちにも入らないのに、あんたなんかに、・・・あっ!」


シンデレラとガラスのクツ


 シンデレラがはいてみると、クツはピッタリです。
 みんなは驚きのあまり、口もきけません。
「あらあら、わたしの出番ね」
 そこへ、あの時の妖精が現れました。
 妖精がつえを一ふりすると、シンデレラはまぶしいほど美しいお姫さまになっていました。
 お母さんとお姉さんたちは、ヘナヘナと、腰をぬかしてしまいました。
 それからシンデレラは王子と結婚して、いつまでもしあわせに暮らしました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日エッフェル塔の日
きょうの誕生花 → はまかんざし(アルメリア)
きょうの誕生日1970年 宮迫博之 (芸人)


きょうの新作昔話 → カイコの犬
きょうの日本昔話 → 百七十歳の九尾キツネ
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3月30日の世界昔話 家の精


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3月30日の世界昔話



家の精



家の精


 むかしむかし、とても食いしん坊のお金持ちの主人がいました。
 主人は毎日おいしいものを食べたくて、腕のいい料理人を一人やとっています。
 料理人はいつも、お屋敷の広い台所で楽しく、主人のために料理を作っていました。
 食いしん坊の主人は、朝食も昼食も夕食も、おいしいものばかりで大満足です。
 ある日の事、料理人が夕食のスープを作っていると、かまどの中から首に袋をさげた、小さな家の精(せい)が出て来ました。
 家の精は、料理人を見上げて言いました。
「あの、この袋一杯のスープがほしいんだけど」
 料理人は、小さな家の精の袋一杯なら、お玉ひとすくいだと思って、お玉でスープをすくい、袋にいれようとしました。
 すると家の精は、小さいくせにスープのナベをヒョイと持ちあげると、ゴクゴクゴクと、ナベいっぱいのスープを全部飲みほしてしまったのです。
 そして家の精は、かまどの中に飛び込んで、あっという間に消えてしまいました。
 料理人は、困ってしまいました。
 それは、またスープを作っていたら、ムニエルやゆでた野菜のサラダを作る時間がなくなってしまうからです。
 料理人は仕方がないので、主人に家の精の事を話して、スープ抜きの夕食をならべました。
 ところが、食いしん坊の主人はカンカンです。
「今度その家の精が出てきたら、ぶんなぐってしまえ!」
 でも料理人は、次の日に家の精が出て来たときにも、やはりスープを飲みほさせてしまったのです。
 こんな小さな家の精をなぐるくらいなら、主人に自分がしかられた方がいいと思ったのです。
 それで次の日も、スープ抜きの夕食をならべました。
 主人は、テーブルをたたいて怒りました。
「今度私のスープをぬすむ家の精が出て来たら、火の中に入れて焼いてしまえ! でないと、お前はクビだぞ!」
 次の日も、家の精は袋をさげて、かまどの中からやって来ました。
「この袋一杯のスープがほしいんだけど」
「でも、だんなさまにしかられるんだよ。本当に、袋一杯分ならわけてあげられるんだけど」
 申しわけなさそうに料理人が言うと、家の精は、泣き出しそうな顔でいいました。
「実は、うちの子供病気なのです。子供にスープを持って行きたいのです」
「そうか。それは大変だなあ。それなら、いるだけ持って行っていいよ」
 料理人が答えると、家の精はスープのナベを持ちあげて、グイグイとスープを飲みほしてしまいました。
 食いしん坊の主人はその話を聞くと、やさしい料理人の首をつかんで、屋敷の外へほうり出してしまいました。
「お前は、クビだ!」
 お屋敷には、すぐに新しい料理人がやとわれました。
 食いしん坊の主人は、
「家の精が現れても、絶対に何もあげてはいかん。なぐってしまえ!」
と、きびしく言いました。
 新しい料理人のスープが出来あがったころ、かまどから家の精が袋をさげて出て来ました。
「この袋一杯のスープがほしいんだけど」
 新しい料理人は、主人の言っていた家の精だとわかると、思いっきりポカポカとなぐりました。
 家の精は大ケガをして、泣きながら、やさしかった前の料理人を探しに行きました。
 そして、森でションボリとすわっている料理人を見つけると、
「やさしいあんたに、おわびとお礼をしたいんだ。今夜屋敷のあかりが消えたら、屋敷の庭に来ておくれ」
 そう言うと、家の精はスーッと消えてしまいました。
 夜、料理人は家の精に、屋敷に入れてもらってビックリ。
 台所のかまどの中には、下へおりる階段があるのです。
 その階段をおりたところには、宝石をちりばめた柱があり、その床は大理石(だいりせき)で出来ていました。
 家の精は小さな箱を持ってきて、料理人に渡しました。
「この箱は願いのかなう箱だよ。ふたを開けてあんたの願いをいってごらん。きっと、かなえてくれるから」
 やさしい料理人は、ふたを開けて、
「おいしい料理の作れる大ナベと、どんなにかたい物でも切れる包丁(ほうちょう)を出してください」
と、頼んでみました。
 そのとたん、目の前にりっぱな大ナベと、キラリと光る包丁が現れたのです。
「ありがとう。これからも、ますますおいしい料理を作って人に喜んでもらえそうだ」
「よかったね。それからその箱は見事な台所も出せるよ。もちろん、宝石もお屋敷も、あんたの願いなら何でもかなうよ」
 やさしい料理人は、家の精に何度もお礼を言って、魔法の小箱を持って屋敷を出て行きました。
 その様子を、こっそり新しい料理人が見ていました。
 朝になると、新しい料理人は家の精をつかまえていいました。
「やい! 今すぐ魔法の小箱を出せ! 出さないと、首をちょん切るぞ!」
 家の精は小箱を出して、新しい料理人に渡しました。
 新しい料理人は主人の部屋へかけて行くと、とくい顔で言いました。
「だんなさま、世界一おいしく、美しいお料理をごちそういたしましょう」
 それを聞いた食いしん坊の主人は、ゴクリとつばを飲み込みました。
「よし、それが本当なら、給料を二倍にしてやろう」
 新しい料理人は、さっそく小箱のふたを開けて、大声で言いました。
「世界一おいしく、美しい料理よ、出ろ!」
 ところが小箱から飛び出してきたのは、棒を持った百人の家の精たちです。
「お前たちだな。悪い料理人と主人は」
 百人の家の精たちは、新しい料理人と食いしん坊の主人をポカポカとなぐり、こぶだらけにしてしまいました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → マフィアの日
きょうの誕生花 → カルセオラリア(きんちゃくそう)
きょうの誕生日1966年 村上里佳子(タレント)




きょうの日本昔話 → サルの恩返し
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3月29日の世界の昔話 ネズミとゾウ


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3月29日の世界の昔話



ネズミとゾウ



ネズミとゾウ
トルコの昔話 → トルコの国情報


 むかしむかし、あるところに、一匹のネズミがいました。
 そのネズミは、カガミを持っていました。
 それもふつうのカガミではなくて、魔法のカガミです。
 そのカガミをのぞくと、だれでも自分が大きくえらく見えるのです。
 毎日、そのカガミをのぞいているうちに、ネズミは自分ほど大きくてえらいものは、どこをさがしてもいないような気がしてきました。
 そして、なかまのネズミたちをバカにして、話もしなくなりました。
 それを見て、世の中のことをよく知っている、年とったおばあさんのネズミがいいました。
「ぼうや。このごろおまえはたいそういばっているそうだが、気をおつけ。ゾウが知ったらとんでもないことになるよ」
「そのゾウってやつは、なんなのさ?」
「ゾウというのは、世界で一番大きな生きものでね。どんなにつよいものでもかなわないんだよ」
「うそだ! おれさまよりつよいものがいてたまるか!」
 こうさけぶと、ネズミはゾウをさがしにでかけました。
 野原でネズミは、みどりのトカゲにであいました。
「おい。ゾウっていうのは、おまえかい?」
「いいえ。わたしはトカゲよ」
「そうか。ゾウでなくてよかったな。ゾウだったらふみつぶしてやるところだった」
 小さなネズミのいばりかたがあんまりおかしかったので、トカゲは思わずふきだしました。
 ネズミはおこって、足をふみならしました。
 するとちょうどそのとき、ズシンズシンと地ひびきがしました。
 みどりのトカゲはおどろいて、石のかげにかくれました。
 ネズミが足をふみならしたために、おそろしい地ひびきがおこったのだと思ったのです。
「ぼくは、なんてえらいんだろう」
 ネズミはとくいになって、また先ヘいきました。
 しばらくいくと、カブトムシにであいました。
「おい。ゾウというのはおまえかい?」
「とんでもない。ぼくはカブトムシさ」
「ゾウでなくてよかったな。ゾウだったらふみつぶしてやるところだった」
 それを聞いて、カブトムシはクスッと笑いました。
 ネズミはおこって、足をふみならしました。
 けれども地面は、ピクリともしません。
 ネズミはもう一回、やってみました。
 やっぱり、なんのひびきもおこりませんでした。
(きっと、地面がしめっているせいだな)
と、思いながら、ネズミは先ヘいきました。
 すこし先で、ネズミはふしぎな生きものにあいました。
 その生きものは、木のそばにジッとすわっていました。
(こいつこそ、ゾウらしいぞ。きっとこのおれさまを見て、こわがっているんだな)
と、ネズミは思って、いばって聞きました。
「おい。おまえはゾウか?」
 それを聞いた生きものは、ニヤリとわらってこたえました。
「ちがうよ。わたしは世界で一番えらいもののなかよしだ。わたしはイヌだよ」
「世界で一番えらいものだと。それはなんだ?」
「人間さ」
「へえ。とにかくゾウでなくてしあわせだったぞ。ゾウだったら、たちまちふみつぶしてやるところだ。世界で一番つよいのは、このおれさまなんだからな」
 イヌはネズミを、からかってやりたくなりました。
「たしかにそうかもしれないね、ネズミくん。人間だって、きみたちにたべさせるために、コメやムギをつくっているんだもの」
「まあな」
 ネズミは先をいそいで、森のおくヘやってきました。
 そこでネズミは、山のように大きなものにぶつかりました。
 足は木のみきのようにふとくて、おまけに、からだの前のほうにも、ながいしっぽがぶらさがっています。
「おまえは、ゾウかい?」
 いばりんぼうのネズミは、力いっぱい声をはりあげました。
 ゾウはあたりを見まわしましたが、ネズミがあんまり小さいので目にはいりません。
 ネズミは、大きな石によじのぼりました。
 ゾウはやっと気がついて、こたえました。
「そうだ。わしはゾウだよ」
「おまえは、けしからんやつだ。おれさまをおどかすとは」
 ネズミはふんぞりかえって、さけびました。
 けれどもゾウはおこりもせず、そばの水たまりに鼻をつっこんで、うぬぼれネズミに、プーッと水をふきかけました。
「ワッー!」
 ネズミはひとたまりもなくふきとばされて、もうすこしでおぼれそうになりました。
 ネズミはやっとのことで、家に帰りつきました。
 ネズミはこんどの旅で、世の中には自分よりもずっとずっとつよいものがいることを思い知りました。
 それからというものネズミは、二度とほかのものをバカにしたり、いばったりしなくなりました。
 ついでに、魔法のカガミをのぞくこともやめたということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


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きょうの誕生日1982年 滝沢秀明 (タレント)


きょうの新作昔話 → 宝の隠し場所
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きょうの世界昔話 → ネズミとゾウ
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3月28日の世界の昔話 バイオリンひきのおじいさん


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3月28日の世界の昔話



バイオリンひきのおじいさん



バイオリンひきのおじいさん

オーストリアの昔話オーストリアの情報


 むかしむかし、あるところに、まずしいバイオリンひきのおじいさんがいました。
 あるさむい冬の日、おじいさんはバイオリンをひきながら町へやってきました。
 でも、おじいさんのバイオリンを聞いてくれる人は、誰一人いません。
 若いとき、このおじいさんはこの町の人気者でした。
 バイオリンをひきながら美しい声で歌を歌うと、たちまち人が集まってきて、たくさんのお金をなげてくれたものです。
 おじいさんはペコペコのお腹をかかえながら、町はずれの小さな教会へ行きました。
 おじいさんは中へ入ると、マリアさまに言いました。
「マリアさま、もうわたしのバイオリンを聞いてくれる人はいません。せめてマリアさまだけでも聞いてください」
 おじいさんはバイオリンをひき、歌を歌いました。
 むかしと少しも変わらない美しい声が、教会の中にひびきました。
 すると、ポトリと、マリアさまの金のくつが片一方、おじいさんの前に落ちてきました。
「ああ、なんとおやさしいマリアさま」
 おじいさんは涙を流して喜び、そのくつを近くの店へ売りに行きました。
 ところが店の人は、ボロボロの服をきたおじいさんを見て、このくつは盗んだものにちがいないと思いました。
 そこですぐに、おじいさんを役人のところへ連れていきました。
 いくらおじいさんが、
「これは、マリアさまからもらった物です」
と、言っても、役人は聞き入れてくれません。
「教会の物を盗むなんて、とんでもない」
 役人はそう言って、おじいさんを死刑にするよう命令しました。
 次の日、おじいさんは町はずれの広場へひかれていきました。
 小さな教会の前に来たとき、おじいさんが言いました。
「最後のお願いです。もう一度だけ、マリアさまの前でバイオリンをひかせてください」
「いいだろう」
 おじいさんはマリアさまの前に行くと、ゆっくりとバイオリンをひきはじめました。
 美しい音が、教会に流れました。
 それに合わせて、おじいさんは心をこめて歌を歌いました。
「ああ、なんてきれいな声だろう」
 町の人たちは、うっとりと耳をかたむけました。
 すると、そのときです。
 マリアさまの足が動いたかと思うと、残っていたもう一方の金のくつが、ポトリと、おじいさんの前に落ちたのです。
「あっ!」
 みんなは、いっせいにマリアさまを見上げました。
 マリアさまは、いつもとかわらないやさしい顔で立っていました。
 やがて町の人たちは、おじいさんのバイオリンに合わせて、マリアさまの歌を歌いました。
 こうしておじいさんは死刑にならず、町の人たちからとても親切にされたそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日シルクロードの日
きょうの誕生花 → たつたそう
きょうの誕生日1975年 神田うの (タレント)




きょうの日本昔話 → 大工と鬼六
きょうの世界昔話 → バイオリンひきのおじいさん
きょうの日本民話 → 月見草の嫁
きょうのイソップ童話オオカミと仲なおりしたイヌ
きょうの江戸小話 → ちっとも変わらん


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3月27日の世界の昔話 魔法の笛


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3月27日の世界の昔話



魔法の笛



魔法の笛

ブルガリアの昔話ブルガリアの情報


 むかしむかし、たくさんのヤギを飼っているおじいさんがいました。
 おじいさんはヤギの世話をさせるために、一人の男の子をやといました。
 その子は、不思議な魔法の笛(ふえ)を持っていました。
 男の子がその笛をふきはじめると、みんなおどりだして、倒れるまでおどりつづけるというのです。
 さて、おじいさんは男の子に、ヤギを森へ連れていかせました。
「笛なんかふいていないで、しっかりヤギに食べさせるんだぞ」
 おじいさんはそういって、男の子を送りだしました。
 日がくれると、男の子はヤギをおって帰ってきました。
 むかえに出たおじいさんは、ビックリしていいました。
「どうしたんだ。見ろ、ヤギたちはヘトヘトになっている。いったい何を食べさせたんだ?」
「はい。おいしい若木の枝を、たっぷり食べさせましたよ」
と、男の子は答えました。
 次の日も、その次の日も同じで、ヤギはますますやせていきました。
 おじいさんは、もう心配でなりません。
 そこである日、こっそりと男の子のあとをつけていきました。
 そしてやぶのかげにかくれてのぞいていると、男の子は若木の枝をたくさん切って、ヤギたちにやりました。
 ヤギたちはおいしそうに音をたてて、若木の枝を食べ始めました。
 すると男の子は、木のきりかぶに腰をかけて、笛をとりだしました。
 笛の音がひびいてくると、ヤギたちは食べていた若木の枝をほうりだしておどりはじめました。
 やぶのかげにかくれていたおじいさんのところにも、笛の音が聞こえてきました。
 おじいさんも、がまんができなくなりました。
 手をふり、足をあげて、おどりだしました。
 ノバラのトゲにひっかかって、たちまち着物がボロボロになりました。
 おじいさんは、泣きながらいいました。
「やめてくれ、やめてくれ」
「やめたくても、笛がだまってくれません」
と、男の子はいいました。
 おじいさんもヤギも、おどりつづけました。
 家では、おばあさんがおじいさんの帰りを待っていました。
 おばあさんは、とうとう待ちきれなくなって、
「ちょっと、見に行ってこようかね」
と、いって、森へ出かけていきました。
 見ると男の子が笛をふき、ヤギもおじいさんもおどっています。
「まあ、あんなところでおどりをおどったりして!」
と、おばあさんはさけびました。
 笛の音は、いっそう高くひびきました。
 やがておばあさんも、手をふり、足をあげて、おどりだしました。
 待っても待っても、おじいさんとおばあさんは帰ってきません。
 今度は、息子が見にいきました。
 男の子が笛をふいて、ヤギがとびはね、おじいさんもおばあさんもおどっています。
 息子は大声で、
「あんなところで、おどりをおどっている!」
と、さけびました。
 けれども笛の音は、もっともっと高くひびきました。
 息子もがまんができなくなって、おどりだしました。
 おじいさんも、おばあさんも、息子も、帰ってきません。
 今度は、お嫁さんが見にいきました。
 そして、お嫁さんもおどりだしました。
 家では、おじいさんのまごたちが、みんなの帰りを待っていました。
 けれども、おじいさんも、おばあさんも、お父さんも、お母さんも、帰ってきません。
 とうとう子どもたちは、森へ行ってみることにしました。
 見ると男の子が笛をふいて、そのまわりをヤギも、おじいさんも、おばあさんも、お父さんも、お母さんも、おどっています。
「やあ、楽しそうだ。ぼくたちもおどろうよ」
 おじいさんのまごも、おどりの輪の中にとびこみました。
 やがて日がくれると、みんなはおどりながら村へ帰りました。
 男の子の笛の音が、村中にひびきました。
 それを聞いた村の人たちの手足も、ひとりでに動きだしました。
 とうとう村中が、大きな輪になっておどりだしました。
 人間も、ウシも、ウマも、ネコも、ニワトリも。朝から晩までおどりつづけました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日さくら(桜)の日
きょうの誕生花 → しょうじょうばかま
きょうの誕生日1970年 マライア・キャリー (歌手)




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きょうの世界昔話 → 魔法の笛
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きょうのイソップ童話ロバとキツネとライオン
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3月26日の世界の昔話 海の水はなぜからい


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3月26日の世界の昔話



海の水はなぜからい



海の水はなぜからい

ドイツの昔話ドイツの情報


 むかしむかし、ある村に、お金持ちの兄と貧乏な弟がすんでいました。
 クリスマスの晩、弟のハンスは兄さんのラルスの家へいってたのみました。
「兄さん、すまないが、食ベ物を少し分けてもらえないか?」
 ハンスは子どもがいるのに、何ひとつ食べる物がなかったのです。
 兄さんは、冷たくいいました。
「またか、困ったやつめ。いいか、これで最後だぞ。もう二度とこないでくれよ。ほら、このブタ肉を持って、とっとと地獄へでもいっちまえ」
 そして、ブタ肉をなげてよこしたのです。
 でもハンスは、とてもすなおな性格だったので、
「ありがとう兄さん。その通りにします」
 そういって、地獄をたずねて歩きました。
 あちこち歩き回っていると、丘で穴をほっているおじいさんに出会いました。
「どこへいくんだね? 日がくれるってのに」
 おじいさんに聞かれたハンスは、
「地獄へいく道を探しているんだ。兄さんが、この肉を持って地獄へ行けっていうもんで」
 すると、おじいさんはいいました。
「では、この穴をおりていくといい」
 そこでハンスは穴の中に入りこみ、ドンドン下へおりていきました。
 しばらくいくと道のまん中に、メラメラと火の燃えているところがありました。
 そのまわりを、悪魔がはね回っています。
 悪魔は、ハンスのそばへ寄ってきてたずねました。
「おいおい、お前、どこへいくんだい?」
「地獄へさ」
「ここが地獄さ。それで、何をしに来たんだい?」
「このブタ肉を、買ってもらおうと思って」
 すると悪魔は、とびあがってよろこびました。
「ウヒヒッ。ちょうど、ほしかったとこさ」
 悪魔はどこからか、うすを出してきて、
「これととりかえようぜ。魔法のうすだよ。心の中でほしいものを思うだけで、何でも出てくる。いらなくなったら、こういえばいいんだ」
 そして何やらヒソヒソと、ハンスにささやきました。
 ハンスはよろこんで、うすを持って帰りました。
 家に帰ると、魔法のうすにロウソクや食べ物をたくさん出させたので、奥さんも子どもも大喜びです。
 やがて、このうすの事を知った兄さんがやってきました。
「ハンス、そのうすを売ってくれ」
「あと半年したら、売ってあげますよ」
 半年後、うすを手に入れた兄さんは、
「うすよ、うす。スープとニシンを出してくれ」
 たちまち、スープとニシンがどんどん出てきました。
 けれど止め方を知らないので、スープとニシンが家から洪水(こうずい)のようにあふれ出しました。
「ハンスたのむ、止めてくれ! うすは返すから」
 こうしてうすは、またハンスの物になりました。
 そしてハンスは、うすのおかげですっかり大金持ちになったのです。
 ある時、塩を運ぶ船の船長が、ハンスの家をたずねてきて言いました。
「ハンスさん、そのうすをゆずってくれませんか? お金はいくらでも出しますから」
 そこでハンスは、うすを売ることにしました。
 けれど船を出してまもなく、船長がうすに塩を出せといったからたまりません。
 塩はドンドンあふれて、どうにも止まらず、とうとう船は塩の重さに、うすごと海にしずんでしまいました。
 それで今でも、海の水はからいのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日カチューシャの歌の日
きょうの誕生花 → しゅんらん
きょうの誕生日1975年 石塚義之 (芸人)


きょうの新作昔話 → 酒好きのおじいさん
きょうの日本昔話 → 八匹のウシ
きょうの世界昔話 → 海の水はなぜからい
きょうの日本民話 → 沼女の手紙
きょうのイソップ童話 → ガチョウとまちがえられた白鳥
きょうの江戸小話 → 入りにくい


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3月25日の世界の昔話 アイリーのかけぶとん


福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 3月の世界昔話


3月25日の世界の昔話



アイリーのかけぶとん



アイリーのかけぶとん

フィンランドの昔話 → フィンランドの国情報


 むかしむかしのお話です。
  フィンランドの冬は一面の銀世界で、今日も朝からずっと雪がふっています。
  だんろのそばでは、アイリーが夫のカールのために、いっしょうけんめいヒツジの毛で、あたたかなかけぶとんをこしらえていました。
「もうすぐカールのたんじょう日がくるわ。世界一きれいで、あたたかなかけぶとんをつくってあげましょう」
  やがて、かけぶとんができあがりました。
  それを見て、近所のおかみさんたちは、
「なんてきれいなふとんなんでしょう。こんなすてきなふとんをプレゼントしてもらえるなんて、カールは幸せ者だわ」
と、アイリーのつくったふとんをほめました。
「そうさ。おれはフィンランド一の幸せ者さ。おくさんはやさしいし、ふとんづくりの名人だしね」
  カールは、プレゼントされたフカフカのかけぶとんの中に、顔をうずめていいました。
  そしてカールは、かけぶとんをたんじょう日まで、たいせつにとっておくことにしました。
  しかし、幸せなカールにもなやみがありました。
  それは、おくさんのアイリーがあわてんぼうだということです。
  神さまは、アイリーにやさしさを、ほかの人よりもたくさんあたえてくれました。
  でも、やさしさをおおくしてくれた分だけ、あわてんぼうにしてしまったのです。
  さて、カールのたんじょう日の夜がやってきました。
  その日はいつもよりさむかったので、カールはアイリーがつくってくれたふとんをかけて休みました。
「アイリー、おやすみ。今夜はこのふとんのおかげで、ゆっくり休むことができるよ」
  アイリーは、カールの幸せそうな顔を見てうれしくなりました。
「いっしょうけんめいに、つくったかいがあったわ。いい夢をたくさん見てね、カール」
  さて、カールが新しいふとんをかけ、それを耳のあたりまでひきあげた時でした。
  カールの二本の足が、ニョッキリと、ふとんからはみ出してしまったのです。
  よく朝、カールはアイリーにいいました。
「アイリー。あのかけぶとんだけど、ぼくが耳のそばまでかぶってねると、足がはみ出してしまうのさ。上のほうは十分なんだが、下のほうがたりないようだ。なおしてくれるかい?」
「あら、たいへん。上のほうが十分なのね。それならいい考えがあるわ。上のほうをきって、下のほうのたりない部分につぎたせばいいんだわ」
  アイリーはさっそくハサミをもってきて、かけぶとんの上のほうをジョキジョキときりおとし、せっせと下のほうにつなげました。
「さあ、カール。これでもうだいじょうぶ」
「ありがとう。やさしいアイリー」
  夫のカールは、幸せな気分でべットに入り、かけぶとんをかけました。
  しかし、ふとんを耳のところまでひきあげると、
「おや? また足が出るぞ。これはいったいどうなっているんだ?」
  あくる朝、カールは残念そうにいいました。
「アイリー、やっぱりだめだよ」
  するとアイリーは、ふとんの上のほうを思いっきりたくさんきりおとし、下のほうにつなげてみたのです。
  しかし、やっぱりだめでした。
  こんなことを何度も何度もくり返しましたが、何度やっても同じでした。
  さて、いつになったら、かけぶとんは完成するのでしょうね。


おしまい


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3月24日の世界の昔話 銅の国、銀の国、金の国


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3月24日の世界の昔話



銅の国、銀の国、金の国



銅の国、銀の国、金の国

ロシアの昔話 → ロシアの国情報


 むかしむかし、あるところに、王さまがいました。
 王さまは、おきさきのナスターシャと、三人の王子といっしょにくらしていました。
 あるとき、おきさきはおともをつれて、庭(にわ)をさんぽしていました。
 するときゅうに、つむじ風がまきおこって、あっというまに、おきさきをさらっていってしまいました。
 王さまは、夜もねむれないほどかなしみました。
 王子たちが大きくなると、王さまは王子たちをよんでいいました。
「王子たちよ。おまえたちの中で、だれがお母さんをさがしにいってくれるかね」
「ぼくたちがいきます」
と、一番上のピョートル王子と、まんなかのワシーリー王子が旅にでかけました。
 それから一年たち、二年たち、とうとう三年めになりました。
 でも、王子たちは帰ってきません。
 ある日、すえの弟のイワン王子が、王さまにたのみました。
「お父さん。どうかお母さんをさがしにいかせてください。兄さんたちをさがしにいかせてください」
 王さまは、たった一人のこったイワン王子をいかせたくありません。
 でも、イワン王子がどうしてもというので、しかたなくゆるしました。
 イワン王子は、一番いいウマにのって旅にでかけました。
 いく日も旅をつづけて、イワン王子はガラスの山のふもとにつきました。
 山のふもとには、二つのテントがあって、ピョートル王子とワシーリー王子がいました。
「やあイワン、どこヘいくんだ?」
「お母さんをさがしに。兄さんたちはどうしたんです?」
「お母さんは、あの山のむこうにいるらしい。だが、ぼくたちにはとうていいけないところだ。もう、三年もここにいるが、どうしてものぼれないんだ」
「そうですか。ぼくもやってみましょう」
 イワン王子は、ガラスの山をのぼりはじめました。
 とてもきゅうな山で、一歩はいあがったかと思うと、十歩ころげおちます。
 それでもイワン王子は、のぼりつづけました。
 手はきずだらけ、足は血だらけになりましたが、三日三晩かかって、やっと上までたどりつきました。
 イワン王子は、山の上から兄さんたちにさけびました。
「ぼくは、お母さんをさがしにいきますから、そこでまっていてください。もし、三年と三か月たっても帰らなかったら、もう死んだものと思ってください」
 イワン王子は、旅をつづけました。
 ドンドン歩いていくと、銅(どう)のご殿がたっていました。
 門のところには、おそろしいヘビが何匹も、銅のクサリでつながれていて、口から火をはいていました。
 そばに井戸(いど)があって、銅のひしゃくが、銅のクサリでつるしてあります。
 ヘビたちは、水のほうに首をのばすのですが、クサリがみじかすぎてとどきません。
 イワン王子はひしゃくでつめたい水をくんで、ヘビに飲ませてやりました。
 すると、ヘビはみんなおとなしくなりました。
 イワン王子は門を通りぬけて、銅のご殿にはいりました。
 なかから、銅の国の王女がでてきました。
「あなたは、どなた?」
「ぼくは、イワン王子。母をさがしにきました。あなたはごぞんじありませんか?」
「わたしは知りませんけれど、まんなかの姉が、知っているかもしれません」
 そういって銅の国の王女は、イワン王子に銅のマリをわたしてくれました。
「このマリをころがしてごらんなさい。道案内をしてくれるでしょう。つむじ風をほろぼしたら、わたくしをたすけてくださいね」
「いいですとも」
 イワン王子は、銅のマリをころがしました。
 マリはコロコロころげながら、王子を銀の国につれていってくれました。
 門のところには、おそろしいヘビが何匹も銀のクサリでつながれていて、口から火をはいています。
 そのそばに、銀のひしゃくをつるした井戸がありました。
 イワン王子は水をくんで、ヘビたちに飲ませてやりました。
 ヘビたちはおとなしくなって、イワン王子を通してくれました。
 銀のご殿の中にはいると、銀の国の王女が走りでてきました。
「おそろしいつむじ風にさらわれてから、もう三年になります。ロシアの方にあえるなんて、ゆめみたいですわ。いったいあなたは、どなたですか?」
「ぼくはイワン王子。つむじ風にさらわれた母をさがしにきたのです。どこにいるか、ごぞんじありませんか?」
「いいえ、知りません。けれども、一番上の姉ならお教えできるでしょう。この銀のマリをさしあげますから、ころがしてついていらっしゃい。つむじ風を負かしたら、どうぞ、わたくしをすくってくださいね」
「いいですとも」
 イワン王子は銀のマリをころがして、そのあとをついていきました。
 しばらく歩いていくと、金のご殿がキラキラと光っていました。
 門のところには、かぞえきれないほどたくさんのヘビが金のクサリにつながれて、シュウシュウと、口から火をはいています。
 そばの井戸には、金のひしゃくが金のクサリでつるしてありました。
 イワン王子は金のひしゃくに水をくんで、ヘビたちに飲ませました。
 ヘビはみんなおとなしくなって、イワン王子を通してくれました。
 ご殿の中にはいると、金の国の王女のエレーナ姫がでてきました。
 絵にもかけないほど、美しい王女です。
「あなたは、どなたですか?」
「ぼくはイワン王子。つむじ風にさらわれた母をさがしにきました。どこにいるか、ごぞんじありませんか?」
「知っていますとも。ここからそれほど遠くはありません。金のマリをさしあげましょう。道案内をしてくれるでしょう。王子さま、つむじ風にお勝ちになったら、わたくしをすくってくださいね」
「いいですとも」
 イワン王子は、金のマリをころがしました。
 そのあとについていくと、いままで見たことも聞いたこともないような、美しいご殿の前にきました。
 いちめんにちりばめた宝石が、もえるようにかがやいています。
 門には頭の六つあるヘビがうようよといて、口から火をふきあげています。
 イワン王子はヘビに水を飲ませて、ご殿の中にはいりました。
 いくつもヘやを通りぬけて、一番おくのへやへはいると、お母さんのナスターシャがかんむりをかぶって、高いところにすわっていました。
 お母さんは、はいってきたイワン王子を見ておどろきました。
「イワン。どうしてここヘきたの?」
「お母さん、あなたをとりもどしにきたのです」
「ありがとう。つむじ風は、それはおそろしい力持ちだから、なかなかむずかしいことですよ。でもお母さんが、おまえの力をふやしてあげましょう」
 お母さんは、イワン王子をひみつの地下室へつれていきました。
 右と左に、水おけがありました。
「イワンや、右がわの水をお飲み」
 イワン王子は、ひと口飲みました。
「気持はどんなだい。力はふえたかい?」
「はい、お母さん。このご殿なんか、片手でひっくりかえせますよ」
「では、もうひと口お飲み」
 イワン王子は、またひと口飲みました。
「こんどは、どのくらい力がふえたかい?」
「世界じゅうだって、ひっくりかえせますよ!」
「それで大丈夫。さあイワン。こんどは、この二つのおけをとりかえておきなさい。右のを左に。左のを右に」
 イワン王子は、右のおけと左のおけをいれかえました。
 イワン王子が飲んだのは、力をふやす水で、左がわにあったのが、力をなくす水でした。
 それが、いれかわったのです。
 地下室からもどると、お母さんはいそいでイワン王子に教えました。
「もうじき、つむじ風が帰ってきます。そうしたらすぐに、つむじ風のこん棒をつかみなさい。どんなことがあっても、はなしてはいけませんよ」
 お母さんがそういっているうちに、外がまっくらになって、地ひびきがおこりました。
 つむじ風が帰ってきたのです。
 イワン王子はパッととびかかって、つむじ風の持っているこん棒をつかみました。
 つむじ風は、いきなり外ヘとびだして、空高くまいあがりました。
 ものすごいいきおいで、山の上、海の上と、とびまわりましたが、イワン王子は死にものぐるいで、こん棒につかまっていました。
 世界をひとめぐりすると、さすがのつむじ風もつかれてきて、地下室に水を飲みに帰りました。
 そして、なにも気がつかずに、右がわのおけの水をガブガブと飲みました。
 イワン王子は、左がわの水を飲みました。
 ひと口飲むごとに、つむじ風の力は、よわくなっていきました。
 ひと口飲むごとに、イワン王子の力は、つよくなっていきました。
 イワン王子は、かんたんに、つむじ風をたおすことができました。
 お母さんをすくいだしたイワン王子は、帰りの旅に出発しました。
 まず、金の国のエレーナ王女をたずねました。
 エレーナ王女は金のタマゴをころがして、金の国をそっくり金のタマゴの中にしまって、イワン王子におくりました。
 そして、二人は結婚のやくそくをしました。
 イワン王子はやくそくどおり、銀の国と銅の国の王女もたすけだしました。
 ガラスの山のいただきにつくと、イワン王子は長いひもをつかって、ふもとまでおりることにしました。
 さて、山のふもとでまっていたピョートル王子とワシーリー王子は、お母さんがひもをつたって ぶじにおりてくるのを見ると、それはそれは喜びました。
 けれども、そのあとから三人の王女がおりてくるのを見ると、イワン王子がにくらしくなりました。
「弟に大きな顔をされるなんて、しゃくじゃないか。お母さんと王女たちは、ぼくたちの手ですくいだしたことにしよう」
 こういって、兄さんたちは山の上からたれているひもをうばいとって、イワン王子をおりられなくしてしまいました。
 イワン王子は一人、山の上へとりのこされました。
 イワン王子は、なきました。
 なきながら、つむじ風のこん棒を右手でほうり投げて、左手でうけとめました。
 するととつぜん、片目の男と、足の悪い男がとびだしてきていいました。
「イワン王子さま、ご用ですか? どんなことでも三つだけ、かなえてあげましょう」
「では、たべるものがほしい」
 イワン王子がそういうと、たちまちたベきれないほどのごちそうがでてきました。
 おなかいっぱいにたべたイワン王子が、
「つぎは、ゆっくり休みたい」
と、いうと、たちまちフカフカのふとんがでてきました。
 イワン王子は、グッスリとねむりました。
 あくる朝、イワン王子はまた、こん棒をほうり投げて持ちかえました。
 すると、片目の男がとびだしてきました。
「さいごのご用は、なんですか?」
「ぼくの国へ帰りたい」
 そういったとたん、イワン王子はもう、自分の国の市場(いちば)のまんなかに立っていました。
 イワン王子は、町のクツ屋にやとわれました。
「どのくらいの腕まえか、ためしにぬってごらん」
と、主人はいって、イワン王子に革をわたしました。
 夜中になると、イワン王子は、そっと金のタマゴをころがして、金のご殿をだしました。
 そしてなかから、エレーナ姫の金のクツをとってくると、またご殿をタマゴのなかへしまいました。
 金のクツを見たクツ屋はビックリして、あわてて王さまのご殿へ持っていきました。
 そのころご殿では、三つの結婚式の用意をしていました。
 ピョートル王子とエレーナ姫、ワシーリー王子と銀の国の王女、銅の国の王女と将軍(しょうぐん)が、結婚式をあげることになったのです。
 クツ屋の持ってきた金のクツを見ると、エレーナ姫は、イワン王子がぶじでいることを知って喜びました。
 エレーナ姫は、王さまにいいました。
「この金のクツをつくったクツ屋に、明日までに、わたくしにピッタリあった金の婚礼衣装(こんれいいしょう)をつくらせてください。それができなければ、ピョートル王子と結婚しません」
 王女の命令を聞いた靴屋は、ためいきをついて帰ってきました。
 けれどもイワン王子は、かんたんにいいました。
「それぐらい、やさしいことです。まあ、さきにねていてください」
 夜中になると、イワン王子は金のタマゴから金のご殿をだして、金のご殿から金の婚礼衣装をとりだしました。
 あくる朝、クツ屋はキラキラと光りかがやく金のきものを見て喜びました。
 さっそくそれを持って、ご殿ヘかけつけました。
 エレーナ姫は、クツ屋にいいつけました。
「あすの夜あけまでに、海の上に金の国をつくり、金のご殿をたてなさい。めずらしい木がしげり、小鳥たちがわたしをほめたたえる歌をうたうようにしなさい。それができなければ、おまえの命はありません」
 クツ屋は生きたここちもなく、帰ってきました。
 けれどもイワン王子は、わらっていいました。
「それぐらい、やさしてことです。心配いりませんよ。まあ、さきにねてください」
 みんながねしずまると、イワン王子は海岸へいって、金のタマゴをころがしました。
 金の国がたちまちあらわれて、まんなかに金のご殿がたちました。
 ご殿から海岸に、金の橋がかけられました。
 まわりにはめずらしい木がしげり、小鳥が美しい声でさえずりはじめました。
 あくる朝、エレーナ姫は金のご殿を見ると、王さまにいいました。
馬車(ばしゃ)を用意してください。あのご殿で結婚式をあげましょう」
 さっそくみんなは馬車に乗って、金のご殿ヘいそぎました。
 金の橋のまんなかに、イワン王子が立っていました。
 エレーナ姫は、大声でさけびました。
「みなさん、わたくしたちをすくってくださったのは、ピョートル王子ではありません。あの橋の上にいらっしゃる、イワン王子です!」
 そしてイワン王子と手をとりあって、金のご殿ヘはいりました。
 ほんとうのことを知った王さまは、ピョートル王子とワシーリー王子を、国から追い出そうとしました。
 けれども心のやさしいイワン王子は、兄さんたちをゆるしてやりました。
 そしてピョートル王子は銀の国の王女と、ワシーリー王子は銅の国の王女と結婚することになり、三つの結婚式を、世界じゅうの人たちがお祝いしたのです。


おしまい


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3月23日の世界の昔話 おじいさんとまご


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3月23日の世界の昔話



おじいさんとまご



おじいさんと孫

グリム童話 → グリム童話の詳細


 むかしむかし、ひどく年をとったおじいさんがいました。
 目はボンヤリして、耳もよく聞こえません。
 おまけに、いつもひざがガタガタとふるえていました。
 テーブルにすわっても、もうスプーンをもつことができません。
 いつもスープを、テーブルかけの上にこぼしました。
 また、口からもスープをこぼすのです。
 おじいさんの息子と、そのお嫁さんは、そのことがいやでたまりませんでした。
 ですから、年とったおじいさんは、とうとう暖炉(だんろ)のうしろのすみっこにすわらなければならなくなりました。
 そのうえ、息子たちはおじいさんの食べものを土のさらに入れてやり、しかも、おなかいっぱいには食べさせませんでした。
 おじいさんの目は、いつもぬれていました。
 あるとき、おじいさんのふるえる手は、その土のさらを床におちてしまい、土のさらはこなごなにわれてしまいました。
 わかいお嫁さんは、ブツブツと文句をいいました。
 おじいさんは、その日は何も食べさせてもらえませんでした。
 お嫁さんはおじいさんのために、ほんのすこしのお金で、木の小ざらを買いました。
 おじいさんはその小ざらに入る分しか、食べさせてもらえません。
 ある日、四つになる小さいまごが、床の上で小さな板きれをあつめていました。
「おまえはそこで、なにをしているんだね?」
と、お父さんはたずねました。
「ぼく、これで小さなおけをこしらえるんだよ」
と、子どもはこたえました。
「ほう、上手なもんだね。でも、そんな小さなおけを、なにに使うんだい?」
 お父さんのことばに、子どもがいいました。
「ぼくがおとなになったらね、お父さんやお母さんは、このおけでごはんを食ベるんだよ」
 これをきくと、息子とお嫁さんは、しばらく顔を見あわせていましたが、とうとう二人とも泣きだしてしまいました。
 そして二人は、年とったおじいさんを、すぐにテーブルのところへつれてきました。
 このときから、おじいさんはいつもみんなといっしょにごはんを食ベることができました。
 そして、すこしぐらいこぼしても、みんななんともいいませんでした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日世界気象の日
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きょうの誕生日1967年 七瀬なつみ (俳優)




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3月22日の世界の昔話 オオカミになった弟


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3月22日の世界の昔話



オオカミになった弟



オオカミになった弟

アメリカの昔話 → アメリカの国情報


 むかしむかし、インディアンの一家が、しずかな森の中で楽しくくらしていました。
  なかまのインディアンたちがすぐにけんかをするのがいやで、この一家だけが、村からずっとはなれた森でくらすようになったのです。
  一家は、お父さんとお母さん、それに子どもが三人の五人家族です。
  ある日、悲しいできごとがおこりました。
  お父さんとお母さんが、重い病気にかかってしまったのです。
  お父さんは、家族をよびよせるといいました。
「これまで本当に楽しかったよ。おまえたちをのこしていくのはつらいが、しかたがない。さて、子どもたちよ、よく聞いておくれ。上の二人はもう大きいから心配ないが、すえの男の子はまだ小さいので一番気にかかる。どうか上の二人は、すえの子を見すてないで、めんどうをみてやってほしい。たのんだよ」
  上の息子と二番目の娘は、お父さんの手をかたくにぎりしめると、しっかりとうなずきました。
  それを見ると、お父さんとお母さんは、安心して息をひきとりました。
  こうして森の中の家には、三人の子どもたちだけがのこされました。
  寒い冬のあいだ、三人は体をよせあって、なかよくすごしました。
  ところが、あたたかい春がきて木の芽(め)がふき出すと、上の息子はソワソワと、おちつかなくなりました。
  ある日、上の息子は妹にいいました。
「ちょっと、自分の生まれた村を見てくるよ」
「すぐに帰ってきてね。お父さんとお母さんがなくなる時に、すえの子をたのむっていったでしょ。あのことばをわすれないでね」
「わかってるよ」
  上の息子は、家を出ていきました。
  そしてそれっきり、帰ってきませんでした。
  月日は流れて、また、つぎの春がめぐってきました。
  すると娘も、ソワソワとおちつかなくなりました。
(兄さんがもどらないのは、きっと、村で楽しいことがたくさんあるからだわ。ああ、わたしもいってみたい)
  娘は、小さな弟にいいました。
「食べものを、たくさん用意しておいたからね。おなかがすいたら食べなさい。わたしは兄さんを見つけにいってくるわ」
  娘が村へ出かけていくと、兄さんは結婚して、幸せにくらしていました。
  やがて娘にも、すきな人ができて結婚してしまいした。
  上の息子も、つぎの娘も、自分たちのくらしがたいせつになって、森へは帰ってきませんでした。
  ひとりのこされた小さな弟は、食べるものがなくなると外へ出て、木イチゴの実や魚をとって食べました。
  まもなく、寒さのきびしい冬がきました。
  寒いうえに、おなかがペコペコになった小さな弟はトボトボと、森の中を歩きまわっているうちに、オオカミのほらあなにたどりつきました。
  ほらあなでは、子どものオオカミが体をよせあってねむっていました。
  つかれきっていた小さな弟は、子どものオオカミたちといっしょに、いつのまにかねむってしまいました。
  さて、どれくらいねむったでしょうか。
  ふと目をさますと、母オオカミがやさしい目をして、小さな弟を見つめていました。
  冬がさって、また春がやってきました。
  ある日、上の息子とつぎの娘は、小さな弟のことを思い出して森をたずねました。
  家にいない小さな弟をさがしていると、とつぜんオオカミによくにたけもののような男の子がかけぬけていきました。
「あっ、あの子だわ!」
「おーい! まってくれ! むかえにきたぞ!」
  二人がさけぶと、小さな弟は、
「ウォーーン!」
と、オオカミにそっくりななき声をあげて、森のおくに消えていき、それっきりすがたをあらわしませんでした。


おしまい


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きょうの誕生日1977年 松本リカ (タレント)


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