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2月28日の世界の昔話 大きなカブ


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2月28日の世界の昔話



大きなカブ



大きなカブ

グリム童話グリム童話の詳細


 むかしむかし、ある村に、大変働き者のお百姓さんがいました。
 お百姓さんは毎日毎日、一生懸命に畑仕事をしています。


 ある年の事です。
 お百姓さんは畑にカブの種をまきましたが、どうしたわけかカブはたった一本しか芽を出しません。
 ところがその一つのカブが、ぐんぐんぐんぐん大きくなり、ついには人が三人も手をつながなければかかえられない程の大きさになったのです。
「こいつはたまげた。こんなにでっかいカブなんて、見た事も聞いた事もない」
「これは、カブの王さまじゃ。いや、カブの化け物じゃ」
 近所の人たちも、そう言って驚きました。
 とても珍しいカブなので、お百姓さんは王さまに差し上げようと考えました。
 そこで大きなカブを荷車に乗せて二匹の牛に引かせると、王さまのお城へ行きました。


「おお、これは素晴らしい」
 王さまは、カブを見てびっくりです。
「こんなに大きな物が作れるとは、感心じゃ。きっと、そなたが真面目に働いていたからであろう」
 王さまはそう言って、たくさんのお金をお百姓さんにご褒美としてやりました。
 さあ、この話は村中の評判になりました。
 そして、この村に住む欲張りな男が、こう考えました。
「おれはカブなんかより、もっと良い物を王さまに差し上げて、もっとたくさんの褒美をもらってやろう」
 そこで欲張りな男は自分の大切な馬に、お金をいっぱい積んで王さまのお城へ行きました。
 そして馬ごと、そっくり王さまに差し上げました。
「これは、ありがたい」」
 王さまは、とても喜びました。
「何か、お返しに褒美をやりたいが、お金の褒美がお金では変だな。・・・そうだ、あの珍しい大カブをつかわそう」
 そう言って王さまは、お百姓さんからもらったカブを男にあげたそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → バカヤローの日
きょうの誕生花 → みすみそう(ゆきわりそう)
きょうの誕生日 → 1978年 菊川怜 (タレント)




きょうの日本昔話 → クラゲのおつかい
きょうの世界昔話 → 大きなカブ
きょうの日本民話 → 人形のお嫁さん
きょうのイソップ童話 → 足をけがしたふりをするロバとオオカミ
きょうの江戸小話 → おれじゃない


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2月27日の世界の昔話 忘れな草


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2月27日の世界の昔話



わすれな草



忘れな草
スイスの昔話 → スイスの国情報


 むかしむかし、あるところに、とても仲の良い男の子と女の子がいました。
 ある時、この二人が山に出かけました。
 手をつないで歌を歌いながら道を進むと、やがて川が見えてきました。
「あら、あんなところに花が咲いているわ」
 女の子が見つけたのは、流れの早い川のすぐそばに咲いている青い花です。
 女の子が大好きな男の子は、女の子の為にその花を取ってあげようと思いました。
 男の子は体が濡れるのも気にしないで、水しぶきがかかる岩を登っていきました。
 ところがその花に手を伸ばした途端、男の子は濡れた川の水で足を滑らせました。
 男の子はあわてて花をつむと、女の子に向かってその花を投げました。
 そしてそのまま川に落ちると、すごい早さで流されて行きます。
 ゴウゴウと言う水の音に混じって、男の子の声が聞こえて来ました。
「大好きだよ! いつまでも、ぼくを忘れないでね!」
 その時からその青い花には『わたしを忘れないでね』という意味の『わすれな草』という名前がついたそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 新撰組の日
きょうの誕生花 → サキシフラガ(くもまぐさ)
きょうの誕生日 → 1969年 富田靖子 (俳優)




きょうの日本昔話 → 二月の桜
きょうの世界昔話 → わすれな草
きょうの日本民話 → 牛になるまんじゅう
きょうのイソップ童話 → ライオンの皮を着たロバとキツネ
きょうの江戸小話 → ふとん


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2月26日の世界の昔話 軍馬と粉屋


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2月26日の世界の昔話



軍馬と粉屋



軍馬と粉屋

イソップ童話 → イソップ童話とは?


 年老いて身体の弱った軍馬が、戦場へ送られる代わりに粉引き場へと送られました。
 彼は自分の運命なげいて、粉屋にこう言いました。
「聞いておくれよ粉屋さん。俺はこう見えても、むかしは戦場でたくさんの手柄を立てたものさ。きれいな鎧で飾られて、いつも馬丁がつきっきりで世話を焼いてくれたものさ。・・・でも、今ではこの有様さ」
 すると、粉屋が言いました。
「むかしの事をくどくど言うのはおよしよ。人生には、浮き沈みがつきものさ。とにかく今は、これからの生活を考えなくっちゃ」


 以前がどうこうと言っても、これからの暮らしが変わる事はありません。
 今は、今出来る精一杯の事をするしかないのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 咸臨丸の日
きょうの誕生花 → スノードロップ
きょうの誕生日 → 1956年 桑田佳祐 (ミュージシャン)


きょうの新作昔話 → スズメがお米を食べる理由
きょうの日本昔話 → ひっぱりあいず
きょうの世界昔話 → 軍馬と粉屋
きょうの日本民話 → 竜になった娘
きょうのイソップ童話 → 旅に出たディオゲネス
きょうの江戸小話 → 七の字


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2月25日の世界の昔話 山のおかしら


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2月25日の世界の昔話



やまのおかしら



山のおかしら
フィリピンの昔話 → フィリピンの国情報


 むかしむかし、マヨンという山の近くに、シヌクアンという大男がいました。
 体中が動物の様に毛むくじゃらで、髪の毛もかれ草の様に伸び放題ですが、でも子ども好きの優しい若者で、よく子どもたちを集めては、
「さあ、坊やたち。みんなでおじさんの腕(うで)にぶら下がってみな」
と、子どもたちに太い腕でブランコをさせたり、逆上がりをさせたりして遊びました。
 また村の力仕事を手伝って、みんなから喜ばれていました。

 ある日の事、シヌクアンのところへ山のけものたちがぞろぞろとやって来ました。
「さてはお前たち、また畑を荒らしにやって来たのだな?」
 シヌクアンが言うと、けものたちはあわてて言いました。
「と、とんでもございません。シヌクアンさまの様な力持ちのおられるところへ、どうして畑を荒らしになど来るものですか。実は、お願いがあってまいりました。シヌクアンさまにわたしたちけものの、お頭(かしら)になって欲しいのです」
「お頭にだって?」
「はい。シヌクアンさまほど、人の為に尽くす人はおられません。それで、そういう方こそ、けもののお頭になって頂きたいと、みんなでお願いにやって来たのです」
 シヌクアンはしばらく考えていましたが、やがて胸をボンと叩いて言いました。
「よし。頭になってやろう。困った事があったら、いつでも相談に来る様に」

 次の朝、シヌクアンがまだ寝ているところに、一羽の小鳥がやって来ました。
「お頭。いつでも困った事とがあったら相談に来る様にとおっしゃったので、さっそくお願いにまいりました。実は、わたしが住んでいる森の奥に沼(ぬま)があるのですが、そこのカエルどもが『ギャアー、ギャアー』うるさく鳴いて困っているのです」
「ふーん。しかしカエルは歌が好きだから、みんなで歌でもうたっているんだろう」
 シヌクアンは眠い目をこすりながら、小鳥をなだめました。
「いえいえ。歌などではありません。汚い声で夜通しわめくんですよ。おかげで小鳥たちは一晩中寝られなくて、もうフラフラです。どうか、カエルどもをこらしめてください」
「ふーん。それはカエルが悪いな。よし、カエルを連れて来い」
 やがて小鳥と一緒に、年を取ったカエルがシヌクアンのところへやって来ました。
 シヌクアンが小鳥の話をしてカエルを叱ると、カエルはふくれっ面で答えました。
「お頭。わたしたちカエルが夜通し鳴いているのは、歌が好きな為ではありません」
「何? それはどう言うわけだ?」
「実は、カメが悪いからですよ。
 カメがあの大きな重い家を背負ったまま、ドボンドボンと沼(ぬま)へ飛び込みので、危なくてしょうがないんです。
 それで下じきになって潰されない様に、自分のいるところをカメに知らせる為に鳴いているんですよ」
 シヌクアンは、カエルの言う事がもっともだと思いました。
「そうだったのか。よし、けしからんカメを連れて来い」
 年を取ったカエルは、やはり年を取ったカメを連れて来ました。
 でもカメは何も言わず、首をすくめて黙っています。
「こら、カメ。黙ってないで謝ったらどうだ? 今後は家を背負ったまま、沼へ飛び込んではならんぞ」
 するとカメは、長い首を出して言いました。
「お頭さま。それはお話が違います。
 わたしどもは、カエルさんに怪我をさせるつもりで沼へ飛び込むのではありません。
 沼に住んでいるホタルが、ボウボウと燃えている火を持って飛び回るので、家を焼かれては大変だと沼へ飛び込むのでございます」
「ふーん。ホタルが火遊びをしているとは知らなかった。確かに家を焼かれては大変だな。よし、けしからんホタルを連れて来い。こらしめてやる」
 しばらくするとカメはホタルを連れて、シヌクアンのところへやって来ました。
「お頭。お待たせいたしました。こいつが火遊びをしているホタルでございます」
「うそです。わたしたちは火遊びなど、一度もした事がありません」
「ほう、それならなぜ、火を持って飛び回っているんだね」
「それは、悪い蚊(か)どものせいです。
 奴らがチクリ、チクリと鋭い剣でわたしたちを刺しますので、わたしたちは火をつけて夜通し蚊の見張りをしているのです」
「さてさて、一つの出来事でも調べれば調べるほど、奥が深いものだ。
 それではそのけしからん蚊を連れて来い。こらしめてやる」
 間もなくホタルに連れられて、蚊がブンブン言いながらやって来ました。
「これこれ、蚊。お頭のシヌクアンさまにごあいさつをしないか」
 ホタルが言いましたが、カは知らん顔でブンブンと言うばかりです。
「こら、蚊。お前は、やたらにその剣でホタルを突き刺すそうだが、それに間違いはないか?」
 シヌクアンが聞きましたが、カは返事をしようとしません。
「返事が出来ないところをみると、この騒ぎの原因は、やはりお前だな。よし。罰としてろうやに入れてやる」
 シヌクアンは山中の蚊を捕まえると、ろうやの中へ入れました。
「やれやれ。これで一安心だ」
 山のけものたちは、みんなホッとしました。
 ところがメスの蚊は謝ったので、許してもらいました。
 でもオスの蚊だけは、どうしても謝りません。
 それで長い間、ろうやに閉じこめられたために、オスのカは声を出すのを忘れてしまったそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 夕刊紙の日
きょうの誕生花 → カランコエ
きょうの誕生日 → 1972年 有野晋哉 (芸人)




きょうの日本昔話 → カニにまけたネコ
きょうの世界昔話 → やまのおかしら
きょうの日本民話 → よっぱらったスズメ
きょうのイソップ童話 → 家がらくらべをするキツネとサル
きょうの江戸小話 → まんじゅうこわい


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2月24日の世界の昔話 橋の上の幸福


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2月24日の世界の昔話



橋の上の幸福



橋の上の幸福
ポーランドの昔話 → ポーランドの国情報


 むかしむかし、スウーピア川と言う川のほとりに、小さな家がありました。
 この家には、お父さんとお母さん、それに三人の子どもが住んでいました。
 お父さんは働き者でしたが、家は貧乏だったので三人の子どもたちはいつもお腹を空かせていました。
 ある年の春、家に食べ物がなくなった為、お父さんはスウーピア川に釣りに出かけました。
「どうか神さま、魚の一匹でも釣らせて下さい」
 お父さんは頑張りましたが、夜になっても魚は一匹も釣れませんでした。
「ああ、なさけない父親だ」
 お父さんは、トボトボと家に帰りました。

 家では、子どもたちがお母さんと眠っていました。
 テーブルの上には、ヤギのミルクがほんの少しお皿に残っています。
「今夜の晩ご飯は、ヤギのミルクだけだったのか。そのうちにヤギもやせてしまって、ミルクを出さなくなるだろう」
 お父さんは大きなため息をついて、ワラのベッドに潜り込みました。
 その夜、お父さんは不思議な夢を見ました。
『シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うよ』
 夢の中で、誰かがお父さんに言うのです。
 朝になって目を覚ましたお父さんは、夢の言葉を繰り返しました。
「『シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うよ』か。一体、どんな幸福だろう。・・・いや、ただの夢じゃないか。本気にするなんてバカバカしい」
 お父さんはそう思って、その日も釣りに出かけました。
 けれども今日も、魚は釣れませんでした。
 そして夜になると、また同じ夢を見たのです。
『シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うよ』
 お父さんは、首をかしげました。
「二日も続けて同じ夢を見るなんて、もしかすると・・・。いや、腹が空き過ぎて、頭がどうかしたのかもしれない」
 次の日、お父さんはまた川へ釣りに行きました。
 けれど魚は釣れず、夜になるとまた同じ夢を見たのです。
『シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うよ』
 朝になると、さすがに気になってお父さんはお母さんに夢の話をしました。
「三日も続けて見るって事は、これは神さまのお告げかもしれねえ。バカバカしいと思うかもしれないが、そんな気がするんだ」
 するとお母さんは、真面目な顔で言いました。
「きっと、神さまのお告げですよ。ちょうどシチェチンで市場が開くから、ついでに市場で働いておいでよ。神さまのお告げだもの。パンの一斤(きん→重量の単位で、1斤は約600グラム)くらいめぐんで下さるわよ」
「そうだな。そうしよう」
 こうしてお父さんは、さっそく出かけて行きました。

 お父さんは途中で友だちの馬車(ばしゃ)に乗せてもらい、三日後にシチェチンの大橋に到着しました。
「さて、まずは幸福を待ってみるか」
 お父さんは夢のお告げ通り、大橋の上に立ってじっと幸福を待ちました。
 でも、夕方になっても何も起こりません。
 今から市場へ行って仕事を探すには遅すぎるし、宿に泊まるお金もありません。
「仕方ない。今夜は橋の下で眠るか」
 お父さんが橋の下で身を震わせると、一人の老人が近づいて来ました。
「どうしたね。こんなところで震えて」
「はい、それは・・・」
 お父さんは、三日続けて見た夢の話をしました。
 すると老人は手を叩いて笑い、こう言ったのです。
「そうか、そうか。
 実はな、わしも同じ夢を三日続けて見たんじゃよ。
 何でもスウーピア川のほとりに貧しい五人家族の家があってな。
 その家の暖炉(だんろ)の下に大金が埋めてあるから、掘ってみろと言うんじゃ。
 しかし、誰がそんな夢の話を信じるかね」
 話を聞き終わると、お父さんは老人の手をしっかりと握りしめ、
「そうですね。私が馬鹿だった。すぐ帰ります」
と、別れを告げて、大橋から遠い家まで走って行きました。
(スウーピア川のほとりの五人家族の貧しい家と言ったら、おれの家しかないはず)
 お父さんは走って走って友だちの馬車に追いつき、三日後には家に帰りつきました。
「あら、あなた、おかえりなさい」
「お父さん、パンは?」
 出迎えるお母さんと子どもに返事もせず、お父さんはオノでいきなりレンガの暖炉を壊し始めました。
「あなた、何するの!」
 驚いたお母さんが止めようとしましたが、暖炉を壊したお父さんは次に暖炉の下を掘り始めたのです。
 お母さんも子どもたちも、お父さんがあまりにも真剣なので、何も言わずにそばでジッと見ていました。
 そしてしばらくすると、お父さんが大声で叫びました。
「あったぞ!」
 そして土の中から大ナベを重たそうに引き上げると、それをテーブルに運んでふたを取りました。
「まあ!」
 大ナベの中には、金貨がたくさん入っていたのです。
「あなた! 夢のお告げはこれだったのね!」
「そうさ! これが夢でお告げのあった幸福だったんだ」
 お父さんはその金貨でパンとソーセージを山ほど買い、子どもたちとお母さんにお腹一杯に食べさせました。

 実はこの金貨は、お父さんのひいじいさんが貯めた物でした。
 ひいじいさんはこの金貨で、レストランを開こうと考えていたのです。
 その事を思い出したお父さんは、残った金貨でシチェチンの大橋にレストランを開きました。

 そのレストランはとても人気を集めて、家族は幸せに暮らしたという事です。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 月光仮面の日
きょうの誕生花 → クロッカス
きょうの誕生日 → 1967年 コージー冨田 (タレント)


きょうの新作昔話 → 一人ぼっちのコウモリ
きょうの日本昔話 → 鼻かぎ権次(ごんじ)
きょうの世界昔話 → 橋の上の幸福
きょうの日本民話 → 爺婆かぼちゃ
きょうのイソップ童話 → よっぱらいとおかみさん
きょうの江戸小話 → 小男のねがい


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2月23日の世界の昔話 かしこいグレーテル


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2月23日の世界の昔話



かしこいグレーテル



かしこいグレーテル
グリム童話 → グリム童話の詳細


 むかしむかし、あるお屋敷のご主人が、お手伝いのグレーテルに言いました。
「今日の晩ご飯は友だちと一緒に食べるから、ニワトリの丸焼きを作っておくれ」
 そこでグレーテルは、夕方になるとニワトリを焼き始めました。
「旦那さま。お友だちは来ましたか? もうすぐニワトリの丸焼きが出来ますよ」
「いや、それがまだ来ないんだ。どうしたのかな?」
 やがて、ニワトリの丸焼きが出来ました。
「旦那さま。お友だちは来ましたか?」
「それがまだなんだ。すぐに呼んで来るから、丸焼きを皿に乗せておいてくれ」
 主人が外へ飛び出すと、グレーテルは丸焼きが上手に出来たかどうか確かめる為に、一口パクリと食べてみました。
「うん、おいしく出来たわ」
 グレーテルはニッコリ笑って、丸焼きを皿に乗せました。
 それからしばらく待ちますが、でも主人は帰って来ません。
「せっかくの丸焼きがもったいないわ。丸焼きは、温かい方がおいしいのに」
 そう言ってグレーテルは、また丸焼きをパクリ。
 それでも、主人は戻って来ません。
「どこまで行ったのかしら?」
 そう言って、また一口パクリ。
「まだかしら」
 パクリ。
「遅いわねえ」
 パクリ。
「冷めちゃうのに」
 パクリ。
 こうしてグレーテルは、とうとうニワトリの丸焼きを全部食べてしまいました。
 するとそこへ、主人が帰って来て、
「友だちは、もうすぐ来るらしい。わたしは今のうちに、食事の時に使うナイフをよく切れる様にしておくよ」
と、ナイフをとぎ始めました。
 さあ、大変です。
 ニワトリの丸焼きを全部食べてしまった事を主人に知れたら、グレーテルは怒られてしまいます。
「どうしましょう?」
 悩んでいるうちに、主人の友だちがやって来ました。
「あっ、そうだわ!」
 良い事を思いついたグレーテルは急いで玄関(げんかん)に行くと、主人の友だちにこっそり言いました。
「あなたがなかなか来ないから、旦那さまはカンカンに怒っています。どうやら、あなたの耳を切ってしまうつもりらしいですよ」
「まさか、そんな事は」
「あら、疑うのなら、旦那さまの部屋をのぞいて見て下さい。旦那さまがあなたの耳を切る為のナイフをといでいますから」
 そう言われて主人の部屋をのぞいた友だちは、主人が本当にナイフをといでいるのを見てびっくりです。
「うひゃーー! お助けを!」
 友だちは、慌てて逃げ出しました。
 その足音を聞いて、主人はナイフを持ったまま。
「おーい、どうして逃げるんだ。せっかくナイフをといで待っていたのに」
と、追いかけて行きました。
 おかげでグレーテルは、ニワトリの丸焼きを食べた事を主人に知られなくてすみました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 税理士の日
きょうの誕生花 → じんちょうげ
きょうの誕生日 → 1956年 野口五郎 (歌手)




きょうの日本昔話 → ひろったさいふ
きょうの世界昔話 → かしこいグレーテル
きょうの日本民話 → 四郎と猫
きょうのイソップ童話 → 山賊とクワの木
きょうの江戸小話 → 負け惜しみ


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2月22日の世界の昔話 おばあさんと山のヤギ


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2月22日の世界の昔話



おばあさんと山のヤギ



おばあさんと山のヤギ
アルバニアの昔話 → アルバニアの国情報


 むかしむかし、山のふもとの小さな家に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
 ある冬の事です。
 おじいさんとおばあさんはつまらない事で、けんかをしてしまいました。
「まあ、何て分からず屋で頑固者なんでしょう! わたしは、ここを出て行きますから!」
 怒ったおばあさんは勢いで家を飛び出すと、寒い北風の吹く山の中へ歩いて行きました。
 そして気がつくと、日が暮れてしまいました。
「どうしましょう?」
 今から家に戻ろうにも、この寒さでは途中で凍え死んでしまうでしょう。
 その時、向こうに明かりが見えました。
「ああ、誰かが住んでいるんだわ。行ってみましょう」
 こうしてたどり着いたその家は、岩のほら穴に木の扉がついていました。
 さっきのあかりは、その扉のすき間からもれていました。
「あの、一晩泊めて下さいな!」
 おばあさんが扉を叩くと、中から出て来たのは一匹のヤギです。
 おばあさんはヤギの向こうに誰かいるのだろうと思って、大声で言いました。
「あの、家に帰れず困っています。どうか一晩、泊めて下さいな!」
 すると目の前のヤギが、人間の言葉で答えたのです。
「わたしらが怖くなかったら、どうぞお泊まりなさい」
「まあ! ・・・いいえ、怖いだなんて。ヤギは家にもいましたから大丈夫ですよ。まあ、しゃべれるヤギは初めてですが」
 おばあさんは、しゃべるヤギに驚きましたが、今は一刻も早く中に入りたいのでそう言いました。
 ヤギはおばあさんを、明るいランプのともる部屋に連れて行ってくれました。
 部屋の真ん中には大きなテーブルがあり、そのテーブルを囲んで六匹のヤギがご飯を食べていました。
 その家にいたのは、七つの目があるヤギ、六つの目があるヤギ、五つの目のヤギ、四つ目のヤギ、三つ目のヤギ、それに扉をあけた二つ目のヤギと、一つ目のヤギでした。
 おばあさんは恐ろしく思いましたが、でも寒い山にいるよりはましです。
「こんばんわ、七匹のヤギさん」
 おばあさんがあいさつをすると、七つの目のヤギが、ヤギの乳のスープやチーズをすすめてくれました。
 ヤギの乳で作ったスープやチーズはとってもおいしくて、おばあさんはすぐに元気になりました。
 そしてごちそうになったお礼に、おばあさんはヤギたちに昔話を話したり、歌をうたって聞かせました。
 ヤギたちはとても喜んで、おばあさんに言いました。
「よかったら、ずっとここにいて下さいな」
 次の日からおばあさんは掃除をしたり草を干してベッドを気持ち良くしたりと、ヤギのために一生懸命に働きました。
 ヤギたちは乳をしぼり、ヨーグルトやバターをたくさん作ってくれました。
 おばあさんは毎日それを食べて、とても元気に過ごしました。

 ある日の事、久しぶりに空が晴れたので、おばあさんはおじいさんの様子を見に行く事にしました。
「けんかをして飛び出して来たけれど、やっぱり心配だわ」
 おばあさんが出かけようとすると、七匹のヤギはヨーグルトのツボを持たせてくれました。
「これは、不思議な力を持つヨーグルトです。おじいさんへのお土産に持って行って。でも、また帰って来てね」
「ええ。ありがとう」
 山を下りてなつかしい我が家に帰ると、畑は凍り付いて家はボロボロでした。
「まあ、おじいさんたら、畑や家の手入れもしないで」
 そう言って家の中へ入ったおばあさんは、悲鳴を上げました。
 何と、おじいさんが寒さで凍え死んでいたのです。
「ああ、おじいさん、どうしましょう」
 おばあさんは泣きながら、おじいさんの口びるにヤギのヨーグルトを塗ってあげました。
 すると、どうでしょう。
 死んでいたおじいさんの目が、パッチリと開いたのです。
 おばあさんは大喜びでおじいさんを介抱すると、これまでの事を全て話して、
「おじいさんも、一緒にヤギたちと暮らしましょう」
と、言いました。
 おじいさんは頷くと、おばあさんと一緒にヤギの家に行く事にしました。
 けれども、七つの目のヤギや、六つの目のヤギを見た途端、おじいさんはびっくりして、
「ギャアアアー!」
と、叫んでしまったのです。
 その声に驚いて、七匹のヤギはどこかへ逃げてしまいました。
「おじいさん、何てひどい声を出すのですか! おじいさんは、あのヤギたちのくれたヨーグルトのお陰で生き返ったんですよ。わたしは今からヤギたちを見つけて来ますから、さっきの事はちゃんと謝るのですよ」
 おばあさんはそう言って、逃げたヤギたちを探しに行きました。
「ヤギや、出て来ておくれ。さっきはびっくりさせたけど、おじいさんは良い人よ」
 するとヤギはたちは、一匹、また一匹と出て来ました。
「おばあさん、本当におじいさんは良い人?」
「私たちを、怖がったりしない?」
「ええ。ちょっとビックリしただけ。帰ればわかるわ、おじいさんはとてもやさしい人だって事が」
 おばあさんは、七匹のヤギと一緒にほら穴の家に戻りました。
 するとおじいさんが、
「おかえり!」
と、飛び出して来て、七匹のヤギのほっぺたに順番にキスをしました。
 それから、おじいさんが暖炉(だんろ)にまきをくべて暖めておいた部屋で、おじいさんの作ったヤギの乳のスープとパンをみんなで食べたのです。

 こうしておばあさんとおじいさんはヤギたちと仲良く暮らし、ヤギの乳のごちそうを食べてとても長生きをしたそうです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 猫の日
きょうの誕生花 → アフェランドラ
きょうの誕生日 → 1948年 都はるみ (歌手)


きょうの新作昔話 → アマガエルが鳴く理由
きょうの日本昔話 → つめときばをとられたネコ
きょうの世界昔話 → おばあさんと山のヤギ
きょうの日本民話 → しじみの恩返し
きょうのイソップ童話 → トビとヘビ
きょうの江戸小話 → 外からエヘンエヘン


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2月21日の世界の昔話 カモシカになった弓の名人


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2月21日の世界の昔話



カモシカになった弓の名人



カモシカになった弓の名人

スイスの昔話スイスの情報


 むかしむかし、ある村に、弓の名人と言われる男がいました。
 男は狙って獲物を、一度も逃がした事がないのが自慢です。


 ある日の事、男は山奥で一頭のメスのカモシカを見つけました。
 男に見つかったカモシカは、必死で逃げました。
 でも、逃げ道を間違えたカモシカは、崖の手前で動けなくなりました。
「クワーン」
 悲しそうに鳴くカモシカを見て、男はにやりと笑いました。
(手こずらせたが、これで最後だ。苦しまない様に、一発で仕留めてやるからな)
 ところが弓を引きしぼった男は、自分の目を疑いました。
 いつ現れたのか、老人がカモシカのそばに座っていたのです。
「誰かは知らないが、危ないからどいてくれ」
 すると老人は、男に言いました。
「わしは、山の精じゃ。お前はなぜ、動物を苦しめて喜んでいる?」
 男は、答えました。
「いいえ、決して喜んではおりません。これは、生きていく為でございます。牛も馬も持っていないわたくしは、鳥やカモシカを撃たねば食べていけないのです」
 すると老人は小さな木のうつわを取り出すと、その中へカモシカの乳をしぼり始めました。
 そしてしぼり終わると、老人は木のうつわを男に渡して言いました。
「さあ、これが今日からの食べ物じゃ」
 うつわの中で乳は、チーズの様に固まっていました。
「この食べ物は、ほんの少しでもうつわに残っていれば、次の食事までには元の量に戻っている。これをやるから、もう二度と山の生き物を殺さない様、約束してくれないか?」
「はい。それが本当なら、二度と弓矢は使いません」
 男はそう言うと、自分の小屋へ帰ってチーズを一口食べてみました。
「こいつは、うまい!」
 あまりのおいしさに、男はもう少しで全部食べてしまうところでした。
 でも老人の言葉を思い出して、ほんのちょっぴり残しておきました。


 次の朝、チーズは元通り、うつわいっぱいになっていました。
 こうして食べる事に困らなくなった男は、山の精との約束通り弓を取ろうとはしませんでした。
 弓の名人が狩りを止めたので、動物たちは平和に暮らす事が出来ました。
 やがて、一年が過ぎました。
 男はふと、ほこりだらけの弓に気がつきました。
 男はほこりをはらいながら、弓のうなる音を思い出しました。
 それから、逃げる動物たちの悲鳴を。
「ああ、腕がなる。久しぶりに、この弓を使ってみたいものだ」
 ちょうどその時、カモシカの声が聞こえました。
 見ると、窓の外に一頭のカモシカが立っています。
「しめた!」
 男はすぐ弓矢を持って、飛び出しました。
 矢に狙われても、男が狩りを止めたと信じているカモシカは、逃げ様とはしません。
「馬鹿め」
 男は素晴らしい獲物を前にして、山の精との約束を忘れていたのです。
 男は力一杯に、弓を引きしぼりました。
 ビュン!
 あわれなカモシカは、男の弓にバッタリと倒れました。
 カモシカの肉は、男の夕食になりました。
「いつものチーズは、食後のデザートにしよう」
 男がそう思って、戸棚を開けると。
「あっ!」
 中から黒ネコが、飛び出して来ました。
 口に、あのうつわをくわえています。
 黒ネコは人間そっくりの目と手をした、気味の悪いネコでした。
「待てっ!」
 男がどなると、ネコは窓から逃げてしまいました。
「まあいいさ。チーズを取られても、おれが狩りを始めればいいだけだ」
 それから男は、また毎日の様に弓矢を持って鳥やカモシカを追い回す様になりました。
 山の平和は、こうして終わりました。


 ある日男は獲物を追いながら、以前に山の精と出会った崖に来ていました。
 不思議な事に、そこにはあの時のメスのカモシカがいるではありませんか。
「あの時は邪魔が入ったが、今日こそ仕留めてやる」
 男はカモシカ目掛けて、矢をはなちました。
 ビュン!
 カモシカは悲しい叫び声をあげながら、谷底深くに落ちて行きました。
「やったぞ!」
 喜びながら谷底をのぞいた男は、その場で凍り付いてしまいました。
 何と谷底の下ではカモシカの代わりに、あの山の精が立っていたのです。
 山の精は、じっと男を見つめていました。
(いや、おれが悪いんじゃない。ネコにチーズを取られてしまったから、それで仕方なく狩りを)
 男は言い訳をしようとして、自分の声にビックリしました。
 その声は人間の声でなく、カモシカの声だったのです。
 いいえ、声だけではありません。
 男はいつの間にか、カモシカになっていたのです。
 カモシカになってしまった男に、山の精は悲しそうに言いました。
「約束を破らなければ、ずっと人間として幸せに暮らせたものを」
 約束を破った弓の名人は、それからはカモシカとして暮らすしかありませんでした。


おしまい


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2月20日の世界の昔話 幽霊の子守り


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2月20日の世界の昔話



幽霊の子守り



幽霊の子守り

ドイツの昔話ドイツの情報


 これは、十八世紀のドイツであったお話です。
 ある町の鍛冶屋のケックさんの家には、幽霊(ゆうれい)が出るといううわさがたちました。
 その幽霊は夜中の十二時頃になると、片方の手に大きなカギの束(たば)を、もう一方の手にはロウソクをともした燭台(しょくだい)を持って、どこからともなく現れるのです。
 白いドレスのすそを引きずって家の中をスーッと音もなく通り抜け、時々、月の光の様に白く輝いて部屋を照らすことから、人々はその幽霊を『白い女』と呼んでいました。
 ケックさんの家のあたりは、むかし小さなお城があったところです。
 その城では大きなホールが事故で崩れ落ちて、たくさんの人が生き埋めになりました。
 その時に死んだ人の魂が、『白い女』の幽霊になったと言い伝えられています。


 さて、ケックさんと奥さんのアグネスさんに十番目の子どもが生まれて、カテリーナと名づけられました。
 ある晩の事、ケックさん夫婦は何か気配を感じて目を覚ましました。
 目をこらすと、暗い部屋をかすかに白い光が横切って行きます。
「誰かいるわ」
「白い女だ。カテリーナのゆりかごのところだ」
「まあ、なんて事なの!」
 お母さんは娘の所へ行こうとしたのですが、恐ろしさのあまり体がガタガタと震えて、一歩も動く事が出来ません。
「大丈夫だ、落ち着きなさい」
 お父さんはカテリーナをビックリさせてはいけないと、少し離れたところから静かに見守っていました。
 白い女は、優しくゆりかごをゆすっています。
 カテリーナは気持ちよさそうに、スヤスヤと眠っていました。
「心配ないさ。この子は、十二月生まれだ」
「そうね。クリスマスシーズンに生まれた子は、幽霊に出会うって言うものね」
 ケックさん夫婦は安心して、白い女に子守りを任せて眠りにつきました。


 白い女は、それから毎晩の様に姿を現しました。
 そして、ゆりかごをゆすったり、カテリーナを抱っこして歩き回ったりと、カテリーナをうまくあやしてくれたのです。
 それは、二年ほど続きました。
 おかげでカテリーナはスクスクと元気に育ち、暗闇を怖がらない子になりました。
 カテリーナが大きくなると、家の人たちはよく幽霊の話をして聞かせます。
「白い女が、あなたのゆりかごをゆすってくれたのよ」
「まあ、会ってみたいわ」
 カテリーナは夜になると、幽霊が現れないかと楽しみに待っていましたが、大きく成長したカテリーナの前に、白い女が姿を現す事はありませんでした。


おしまい


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2月19日の世界の昔話 月の夜の訪問者


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2月19日の世界の昔話



月の夜の訪問者



月の夜の訪問者
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♪音声配信


 むかしむかし、将来結婚する事を誓い合った若者と娘がいました。
 ある日、若者が仕事で旅に出る事になったので、娘にしばらくの別れを告げて、自分の金の指輪(ゆびわ)を娘の薬指にはめてあげました。
「帰るまで、これはきみが持っていてくれないか」
「うん。じゃあ、あなたにはこれを」
 娘も自分の指から銅の指輪を抜き取ると、若者の小指にはめました。
「それじゃあ、秋の収穫(しゅうかく)の頃には帰って来るからね」
 若者は、そう約束をしたのですが、若者は秋になっても村に帰って来ませんでした。
 村に初雪が降るようになっても、若者からは何のたよりもありませんでした。

 ある日、娘は友だちに誘われて、ひと晩泊まりに行きました。
 そこにはほかに友だちも二人来ていて、四人は一緒に糸をつむいだり、話をしたりして、とても賑やかに夜を過ごしました。
 そのうちに話がはずんで、自分たちの恋人の話になりました。
 そして、旅に出た若者を待っている娘の番になりました。
「ねえ、これを見て。この金の指輪は、あの人が別れる時にわたしの指にはめてくれたのよ。これをはずせる人なんて、この世にたった一人だけ、あの人しかいないのよ」
「でも、そんなにあなたを想っているのなら、そろそろ帰って来ても良い頃なのにね」
「それは、・・・・・・」
 外は朝からの雪が降り積もっていて、あたりはまっ白です。
 ソリのスズの音が遠くから近づいて来ては、また遠ざかって行きました。
「ねえ、あのソリは、何だろうね?」
「本当ね。来たかと思うと、また行ってしまうし。まるで誰かを探しているみたい」
 そう言っていると、スズの音が家のそばまで来てピタリと止まりました。
「ねえ。さっきのソリが来たよ」
 一人の娘がそう言った時、
 コンコン、コンコン
と、扉を叩く音がしました。
 こんな夜ふけに誰だろうと、みんなで恐る恐る窓の外をのぞいてみました。
「ねえ、誰かが黒い外とうを着ているわ」
「若い男の人よ」
「どれ、わたしにも見せて」
 そして娘が見てみると、それは何と、旅に出た自分の恋人だったのです。
「ごらんなさい! 帰って来たわ。わたしのいい人が!」
 娘は喜んで扉を開けると、若者に飛びつきました。
「お帰りなさい! ・・・まあ! すっかり冷えてるじゃないの。手も顔もこんなに冷たくなって。さあ、暖炉(だんろ)にあたって」
 娘が手を取って中に入れようとしましたが、若者は火のそばには行きませんでした。
「それじゃあ、わたしと一緒に家に帰ろう」
 すると娘の友だちは、
「こんな夜ふけだから、明日にしたら」
と、言って引き留めましたが、でも娘は、
「うん。でも、二人で家に帰るわ。糸つむぎの続きは、また明日にしましょう」
と、若者のソリに乗りました。
 娘が若者に肩を寄せた時、若者の体が氷の様に冷たいのでビックリしましたが、若者の小指に銅の指輪をはめているのでニッコリと微笑みました。
「さあ、あなたの家に連れて行って」
 二人を乗せたソリは、月の夜道を走っていきました。
 でもそれっきり、二人の姿を見た人は誰もいませんでした。


おしまい


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