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9月30日の世界の昔話 ふしぎな胡弓


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9月30日の世界の昔話



リュート・胡弓



ふしぎな胡弓
ベトナムの昔話 → ベトナムの国情報


 むかしむかし、二人の友だちが、「にいさん」「おとうと」と、よびあって、兄弟のようになかよくくらしていました。
 ある日のこと、二人でいっしょに山へ狩りにいきました。
 すると、ふいに頭の上を、バタバタッと、見たこともない大きな鳥がとんでいきました。
 すぐさまにいさんは、矢をいようとしましたが、それを弟が、
「まって、あの鳥はなんだろう?」
と、にいさんをとめました。
 見ると、その鳥は人間らしいものをつかんでとんでいるのです。
 いま、いおとせば、人の命がたすかりません。
 そこで二人は山をよじのぼり、谷をわたって、どこまでもどこまでも鳥のあとを追っていきました。
 二人が歩きつかれてヘトヘトになったころ、ようやく鳥はまいおりました。
 そして、ふしぎなほら穴にそのえものをかくすと、またも大空高く、まいあがっていきました。
 二人はすぐにかけよって、ほら穴の中をのぞきこみました。
 ほら穴は、深い深いたて穴で、なかなかおりることができません。
「にいさん、このつなの先を持っていて。ぼくがおりて、中の人を助けたらあいずをするよ。そしたらつなをひっぱりあげて」
 弟はそういって、つなをつたわって、スルスルと穴の底へおりていきました。
 穴は思ったよりも深くて、どこまでいっても底につきません。
 おまけに、だんだんひろくなっていくのです。
 にいさんは穴の外で弟からのあいずを、いまかいまかとまっていました。
 やがて日がくれて、夜になりました。
 それでも、弟のあいずはありません。
 そのうちに東の空があかるくなると、きゅうにさわがしい人の声が聞こえてきました。
「お姫さまをさらったあやしい鳥が、この山にはいったのを見たものがいる。かならずさがしだせ」
「さがしたものには、ごほうびをくださるそうだ」
「いや、それだけじゃない。お姫さまもいただけるそうだ」
 にいさんは、木のかげからみんなの話を聞いて思いました。
「さっき鳥がつかんでいたのが、お姫さまにちがいない」
 いっぽう穴の中の弟は、岩かげに気をうしなっているお姫さまを見つけだしました。
「しっかりしてください。さあ、元気をだして」
 弟はそういいながら、岩かげの水をお姫さまの口にいれてやって、だきおこしました。
 お姫さまは、パッチリと目を開けていいました。
「ありがとう。助けてくださってありがとう。・・・ここはいったい、どこですか?」
「・・・・・・」
 弟は、お姫さまがあまりに美しいので、ジッと見とれてヘんじもできません。
 お姫さまのほうも、このりっぱな若者に心をひかれてしまいました。
 けれども、いつまでもこうしてはいられません。
 弟はお姫さまをかかえて、つなのさがっているところまではこびました。
 そしてお姫さまのからだを、つなにしっかりとむすびつけました。
 それから穴の外にいるにいさんにむかって、つなを二、三度ひいて、あいずをおくりました。
 にいさんがひっぱりあげてみると、それは美しいお姫さまです。
(まちがいない。お姫さまだ。ごほうびがもらえるぞ。それに、このきれいなお姫さまもだ)
 こう思うと、にいさんはとつぜん、つなをひきあげてしまいました。
 そして穴の上から石や土を投げおとして、穴の口をふさいでしまいました。
 そのうちに、山の中をさがしまわっていた人たちが集まってきました。
 すると、にいさんは、
「お姫さまをお助けいたしましたのは、わたくしでございます」
と、いったのです。
 そのため王さまから、たくさんのごほうびをいただいたうえに、大臣にしてもらいました。
 ただ、お姫さまだけは、
「わたしをたすけてくれたのは、あの人ではありません」
と、いいはって、にいさんのお嫁さんになろうとはしませんでした。
 けれども、お姫さまはおそろしい目にあったので、どうかしているのだとみんなはいって、だれもお姫さまのいうことを信じてはくれませんでした。
 さて、穴の中にとじこめられた弟は、大声で助けをよびましたが、だれ一人助けにきてくれるものはありません。
 しかたなく、もういちど穴の底の道をひきかえして、おくへおくへとすすんでいきました。
と、ふいに、うめき声が聞こえてきました。
 弟はいそいで、その声のほうへ近よっていきました。
 すると、人が一人たおれていたので、弟はすぐさまかいほうしてやりました。
「ありがとう。あなたはしんせつなお方です」
と、その人は気がついていいました。
「いや、おたすけしても、ここからでられないのです」
と、弟はこまったようにいいました。
「それなら、わたしが案内しましょう。わたしは水の国の王子です。水のあるところなら、どこにでも自由いけるのです」
 水の国の王子は、そういって、さきにたちました。
 二人は岩のあいだを流れる清水をつたわって、大きなひろい海にでました。
 王子がぶじに帰ってきたのを見て、水の国の王さまは、たいへんよろこびました。
「王子を助けてくれたお礼に、宝物の胡弓(こきゅう)をあげましょう」,
 弟が手にとってひきはじめると、美しいしらべが流れでました。
 そのために海は波うつのをわすれ、風はピタリとやんでしまいました。
 こうして弟は、胡弓をひいて旅をしながら、いつか都にたどりつきました。
 その胡弓の音色(ねいろ)は都のすみずみまで流れて、人びとの心をなぐさめました。
 このふしぎな胡弓ひきのひょうばんは、たちまちお城につたわりました。
 王さまは、さっそく、
「その胡弓ひきを、よびなさい」
と、大臣にいいつけました。
 いまは大臣になっているにいさんは、胡弓ひきを見てビックリ。
 穴の中でとっくに死んだはずの、弟ではありませんか。
 そこで王さまに、つげぐちをしました。
「しらべましたところ、あの胡弓ひきは敵の一人でございました。さっそく、死刑にするほうがよいとぞんじます」
 それから家来にいいつけて、弟をとらえさせて、死刑にしようとしました。
 弟は、さいごのねがいとして、
「死ぬまえに一度だけ、胡弓をひかせてください」
と、お願いしました。
 王さまは、これをゆるしました。
 弟はしずかに、胡弓をひきはじめました。
 そのウットリするような美しいしらべは、人びとの心の中にしみわたっていきました。
 すると、どうでしょう。
 死刑をおこなう役人は、刀を投げすててしまいました。
 見まもる人びとの心はなごやかになり、お城じゅうが、おだやかなやさしい気分になっていきました。
 そのしらべは、お城のおくのヘやにひきこもっている、お姫さまの耳にも流れていきました。
 しらべはしだいにさびしく、悲しいひびきをまして、やがて、こううたうように聞こえました。
『お姫さまをおすくいしたのは、だれでしょう? つみもなく、死刑になるのはなぜでしょう?』
 お姫さまは、ハッと心をうたれました。
「そうだ、あのお方だわ。あのお方にわたしは、すくわれたのだわ」
 お姫さまははだしのまま、かいだんをかけおりました。
 胡弓ひきのそばにかけよって、しっかりと手をにぎり、目になみだをうかべて見つめました。
 胡弓ひきもお姫さまの手を、つよくにぎりかえしました。
 二人はしばらくのあいだ、だまって見つめあっていました。
 王さまは胡弓ひきをよんで、あらためてわけを聞きました。
 そしてはじめて、なにもかもがわかりました。
 王さまはそこで、お姫さまと弟を結婚させて、王さまのくらいをゆずることにしました。
 このわかい王さまは、平和な国をつくりあげましたので、人びとからもうやまわれ、国はますますさかえました。
 ところがとなりの国は、この国がさかえるのをねたましく思いました。
 そして、いくつもの国ぐにを仲間にさそって、いくさをしむけてきたのです。
 まえの国王も、おきさきも、はやく兵隊をくりだして、敵をむかえうつようにといいました。
 けれどもわかい王さまは、それを聞きいれません。
 とうとう、お城の近くまで、敵がせまってきました。
 このとき、わかい王さまは、お姫さまといっしょにお城の高い塔にのぼって、しずかに胡弓をひきはじめました。
 胡弓のしらべは水のように流れて、敵の兵士たちの心をきよめました。
 わかい王さまは、敵によびかけました。
「聞きなさい、兵士たちよ。すぐに弓矢をすてて、国へ帰りなさい。むだな戦いをして、たがいに命をすてるのはバカなことだ。母や、妻や、子どもたちのことを考えなさい」
 そのことばにつれて、胡弓の音がやさしく、そして力づよく流れました。
 敵の兵士たちはそれを聞くと、一人、二人と、弓矢をすて、やがてみんながこうさんしました。
 そして国へ帰ってからも、この胡弓のしらべをわすれずに、二度とせめてはきませんでした。
 わかい王さまの胡弓のしらべは、国ぐにのあらそいも、にくしみも、すべてをおし流してしまったのです。
 それからはみんなが、いつまでもいつまでも、なかよく平和にくらしました。

 このお話には、長いあいだ外国の支配をうけていた、ベトナムの人びとの平和ヘの願いがこめられています。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → クレーンの日
きょうの誕生花 → はげいとう
きょうの誕生日 → 1966年 東山紀之(俳優, 歌手)


きょうの新作昔話 → いたずらタヌキと木こり
きょうの日本昔話 → あぶらあげ
きょうの世界昔話 → ふしぎな胡弓
きょうの日本民話 → 乙姫さまのくれたネコ
きょうのイソップ童話 → 波をかぞえる人
きょうの江戸小話 → ぱたぱたとふうふう


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9月29日の世界の昔話 百匹のヒツジ


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9月29日の世界の昔話



百匹のヒツジ



百匹のヒツジ
ドイツの昔話 → ドイツの国情報


 むかしむかし、ある村に、ヒツジを百匹飼っている大金持ちと、ヒツジが三匹だけのまずしい家が、となり同士でくらしていました。
 ある日まずしい家の息子は、三匹のヒツジに草をたくさん食べさせてもらうために、大金持ちの牧場へ働きに出ました。
 そうして、何日かたったある日のこと。
 お城の王さまがヒツジの肉を食べたいので、村から連れてくるよう家来に命じました。
 王さまの命令でも、大金持ちの主人は自分の百匹のヒツジが一匹でもへるのをいやがって、まずしい家の息子のヒツジをさしだすように言いました。
 息子は一匹を、泣きながら王さまの家来に渡しました。
 すると王さまは一週間もたたないうちに、もう一匹ヒツジを連れてくるようにと命令したのです。
 今度もまた大金持ちの主人は、まずしい家のヒツジをさしだすように言いつけました。
 こうしてまずしい家では、ヒツジを二匹もとられたのです。
 息子は残った一匹のヒツジを連れて、旅に出ることにしました。
 そのことを知った息子のお父さんは、自分も息子を探しに旅に出ました。
 お父さんは、お日さまにたずねました。
「お日さま。あなたは私の息子を知りませんか?」
 お日さまは、気のどくそうにこう言いました。
「このところ雲(くも)にかくされていましたから、何も見ることができなかったんですよ。でも、もうすぐつむじ風が来るから、聞いてごらんなさい」
 お父さんは大きな木に登り、枝にしっかりつかまってつむじ風を待ちました。
 つむじ風が来ると、お父さんはさけびました。
「つむじ風さん、ヒツジを連れた息子を知りませんか?」
 つむじ風は、ピューピューふきあれながら、
「ああ、知ってるぜ。連れて行ってやろう」
 つむじ風はお父さんをつまみあげ、息子とヒツジがいる深い谷底へ連れて行きました。
 お父さんと息子は、また会えたことを抱き合って喜びました。
 そのようすを、神さまと弟子が見ていました。
 神さまと弟子は、お父さんと息子の心を見てみようと、旅人の姿になって近づいて行きました。
「もし、もし・・・」
 ボロボロの服を着た二人の旅人が声をかけると、お父さんと息子はすぐに目をさましました。
「はい。なんでしょうか?」
「私たちは長いこと旅を続けてきて、おなかがペコペコでたおれそうです。そのヒツジの肉を食べさせてもらえないでしょうか?」
 旅人の言葉に、お父さんと息子はうなずきました。
 二人の旅人は、
「おいしい。おいしい」
と、ヒツジの肉をたくさん食べました。
 旅人の一人が、お父さんと息子に言いました。
「どうもごちそうさまでした。今夜ねる前に、私たちの食べ残した骨を、ヒツジの皮の中にいれておいてください」
 お父さんと息子は首をかしげながらも、言うとおりにしました。
 次の日の朝、二人が目を覚ますと昨日の旅人たちはおらず、かわりにヒツジが何百頭もいたのです。
 おまけに、ヒツジたちを守る立派な番犬が、三匹もいました。
「わあ、すごいや。お父さん、数えきれないくらいのヒツジがいるよ」
 お父さんも大喜びです。
 そして、一匹のヒツジの角に、
《昨日はごちそうさまでした。おれいに、このヒツジたちをあなた方にさしあげましょう》
と、書かれているではありませんか。
 お父さんと息子は、たくさんのヒツジを連れて家に帰りました。
 そして、広い広い牧場を買いました。
 それを見た大金持ちはすぐに飛んで来て、どうしてこうなれたのかたずねました。
 お父さんと息子が、ボロボロの服を着た旅人のことを話すと、大金持ちは町へ走って行きました。
 そして、ボロボロの服を着て、くらしにこまっていそうな人を見ると、
「ごちそうしてやる。うちへ来い!」
と、家に連れてきたのです。
 それから、牧場にいたヒツジを全部殺して、ボロボロの服を着た人たちに食べさせました。
 大金持ちは、それを見てニヤニヤ笑いながら、
「よしよし、これだけのヒツジを食べさせりゃあ、朝には千匹。いや一万匹のヒツジに変わっているだろう! わしは世界一のヒツジ持ちになれるぞ!」
 そうして、おなかいっぱいになったボロボロの服を着た人たちが次々に眠ると、大金持ちは大急ぎで何千本もの骨をひろい集め、どんどんヒツジの皮の中にいれました。
 さて、朝になってニワトリがないたので、大金持ちはいそいで牧場へ走って行きました。
「ウヒヒヒ。牧場には一万匹のヒツジがいるはずだ」
 ところが牧場にいるのは、大いびきのボロボロの服を着た人たちと、ヒツジの皮に入れられた骨だけです。
「・・・なんてこった! こんなはずでは・・・」
 あまりのショックに、大金持ちは気を失ってしまいました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 招き猫の日
きょうの誕生花 → チトニア(メキシコひまわり)
きょうの誕生日 → 1980年 榎本加奈子(俳優)




きょうの日本昔話 → ネズミのすもう
きょうの世界昔話 → 百匹のヒツジ
きょうの日本民話 → キジムナーのしかえし
きょうのイソップ童話 → ネズミをこわがるライオンとキツネ
きょうの江戸小話 → 鉄砲とさいふ


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9月28日の世界の昔話 コウモリのはねをつけた小オニ


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9月28日の世界の昔話



コウモリのはねをつけた小オニ



コウモリのはねをつけた小オニ
インドの昔話 → インドの国情報


 むかしむかし、一人の王子さまがいました。
 ある日、森の中をあるいていると、大きな木の上から人のはなし声がきこえてきました。
 ふしぎにおもってその木をのぼっていくと村があり、風にたおされた家をみんなでたてなおしているところでした。
 村人たちは、王子さまをみて、
「どうか、わたしたちのしごとを手つだってください」
と、いいました。
 でも、木はまだまだ上へつづいているので、王子さまは、
「わたしは、ここへきたのではない」
と、いって、どんどん上へのぽっていきました。
 すると木のてっぺんに、すばらしい宮殿(きゅうでん)がたっていて、うまいぐあいに門があいていました。
(いったい、だれがすんでいるのかな?)
  王子さまは宮殿にはいり、あちこちのへやをみてまわりました。
 どのへやにも、背中にコウモリのはねをつけた小オニたちが、グッスリとねていました。
 ところがいちばんおくのへやをのぞいてみると、うつくしい王女さまが金のくさりではしらにしばりつけられています。
「おねがいです。わたしをたすけてください」
 王女さまが、王子さまをみていいました。
 王子さまは、おどろいてたずねました。
「だれが、こんな目にあわせたのです?」
「この宮殿にすんでいる、小オニの親分です。いまでかけています。さあはやく、このくさりをきってください。グズグズしているともどってきます」
 そこで王子さまは手オノでくさりをきると、王女さまの手をとって宮殿のそとへはしりだしました。
 それから大きな木にとびつき、王女さまをかかえるようにして森の中におりたのです。
 ちょうどそのころ、親分が宮殿へもどってきました。
 王女さまがにげたのをしって、親分が声をあげました。
「みんなおきろ! 王女がにげだしたぞ!」
 ねむっていた子分たちはビックリしてとびおきると、親分のあとにつづいてそとへとびだし、つぎつぎと木にとびつきました。
 とちゅうの村まできて、親分が村人たちにたずねました。
「王女が、ここをとおっていかなかったか?」
「ああさっき、とおっていったよ」
 それをきくと、小オニどもは大いそぎで下へいき、森の中へとびおりました。
 王子さまはうしろからきこえてくる小オニたちの声をきいて、王女さまをすばやく木のしげみにかくし、手にもっていたオノで木をきりはじめました。
 そこへ子分をひきつれた、小オニの親分がやってきました。
 親分は王子さまを木こりだとおもって、たずねました。
「おい、木こり。王女をみかけなかったか?」
 そのとたん、王子さまは、
「えーん、えーん、えーん」
と、声をあげてなきはじめました。
 親分はビックリして、
「なぜなく? わしは、王女をみなかったかときいているんだ」
と、どなりました。
 すると王子さまが、なきながらいいました。
「えーん。だって、あのゆうめいな小オニの親分が、病気でしにそうだっていうではありませんか」
「なんだと! そりゃ、ほんとうか?」
 王子さまが、コクリとうなずきました。
「まさか、そんな・・・」
 それで親分は、大あわてで宮殿へもどっていきました。
「おまえたち、わしが病気で死にそうにみえるか?」
「とんでもない。親分はとても元気ですよ」
 子分たちが、口をそろえていいました。
 親分はそれをきくと、ホッとして、
「あの木こりめ、よくもうそをつきやがったな。ただじゃ、おかねえ!」
と、いって、ふたたび木をおりていきました。
 王女さまとにげていた王子さまは、ほらあなの中へ王女さまをかくすと、服をうらがえしにきて、わざと小オニたちのほうへちかづいていきました。
「おいおまえ、王女をみなかったか?」
 小オニの親分が、たずねました。
「さあ」
「それじゃ、木こりをみなかったか?」
「だれもみやしないよ。とにかくいまは、あんたとはなしているひまがないんだ。王さまの使いで小オニのいる宮殿へ、いそいでしらせにいかなくちゃならないんだ」
「なに、小オニのいる宮殿へだと。なにをしらせにいくんだ?」
「あんたきかなかったのかい? あのゆうめいな小オニの親分が死んだのさ」
 それをきくと小オニの親分はとびあがっておどろき、木のてっぺんの宮殿へもどっていきました。
「おい、みんな! 小オニの親分とはだれのことだ?」
「そりゃ、そこにいる親分のことで」
 小オニたちが、いっせいに親分をゆびさしました。
「そうだろう。それならどうしてこのわしが死んでいるんだ? こんなにピンピンしているのに。わしは生きているだろ?」
「あたりまえですよ! ごらんのとおり、親分はげんきで生きているじゃないですか」
「そうか。くそ、あのうそつきめ。ただじゃおかんぞ!」
 小オニの親分は、またまた子分どもをひきつれて、森の中へもどってきました。
 ふと森のそとをみると、王女さまと王子さまのはしっていくすがたがみえます。
「あそこだ!」
 親分はコウモリのはねをひろげると、風のように二人をおいかけました。
 二人が城のまえまできたとき、親分が王女さまのうわぎをつかみました。
 王女さまはいそいでうわぎをぬぐと、そのまま城の中へとびこみました。
 王子さまはうしろをふりむきざま、オノをふりあげて、小オニの親分の頭を力いっぱいなぐりつけました。
「いたい!」
 親分はひめいをあげてとびあがると、もうあともみずににげだし、じぶんの宮殿へもどっていきました。
 このあと、王子さまはこの王女さまとけっこんして、しあわせにくらしたということです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → パソコン記念日
きょうの誕生花 → しおん
きょうの誕生日 → 1982年 吹石一恵(俳優)


きょうの新作昔話 → 沼女の手紙
きょうの日本昔話 → サル地蔵
きょうの世界昔話 → コウモリのはねをつけた小オニ
きょうの日本民話 → アジ船と口さけばば
きょうのイソップ童話 → カナリアとコウモリ
きょうの江戸小話 → 名医


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9月27日の世界の昔話 花のおじいさん


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9月27日の世界の昔話



花のおじいさん



花のおじいさん


中国の昔話
 → 中国の国情報


 むかしむかし、あるところに、たいそう花の好きなおじいさんがいました。
 自分のうちの庭に、いつもたくさんの花をうえています。
 毎朝早く、おじいさんは庭をきれいにそうじして、木にも草にも、一本のこらずていねいに水をやります。
 新しくさきかけの花を見つけると、おじいさんはよろこんで、その花におじぎをしたり、お酒をそなえたりしました。
 雨がひどく降ったり、風がはげしくふくときなどは、おじいさんは夜中でも起きだして、庭へ出て花をみまわります。
 もし、おれそうな枝があると、竹でささえをしてやります。
 しぼんだ花や、ちってしまった花を見ると、
「かわいそうになあ」
と、ため息をついて、なみだをこぼします。
 そうして、ちった花びらをはき集めて、一つ一つ水できれいに洗います。
 それからカメの中に入れて、お祭りをしてから土にうめてやります。
 花のお葬式(そうしき)です。
 これほどまでに、花をかわいがっているのでした。
 ある日のこと、そのおじいさんの家のそばを、らんぼうな男たちが通りかかりました。
「おお、ここが花ぐるいのじいさんのうちだな。はいってみよう」
 らんぼう者たちは、おじいさんのいえのとびらをドンドンとたたきました。
「おい、おれたちにも、庭のなかを見せろ!」
 おじいさんはしかたなしに、らんぼう者たちを入れてやりました。
 庭にはちょうど、ボタンの花がいっぱいさいていました。
 でも、らんぼう者は花も見ないで、仲間たちといっしょに酒を飲みはじめました。
 そのうちに、よっぱらったらんぼう者は、そばにあった花の枝をおろうとしました。
 おじいさんはビックリして、
「あっ、やめてください。花がかわいそうです」
と、止めに入りましたが、
「ええい、うるさい! こうしてくれるわ!」
と、いって、花をみんなへしおってしまうと、わらいながら庭を出ていきました。
 おじいさんは、メチャクチャにされた花を見て、ポロポロとなみだをこぼしました。
「ああ、かわいそうに、かわいそうに」
 すると、そのとき、
「もし、もし」
と、いう、やさしい声がしました。
 おじいさんがふり向いて見ますと、美しい花の仙女(せんにょ)が立っていました。
「おじいさん、そんなに悲しまなくてもいいですよ。花はみんな、元のようにしてあげます」
と、いって、パッと消えてしまいました。
 おじいさんが花を見てみると、いつのまにか花はみんな元どおりになっており、どの花も、前よりもっときれいな色になってさいていました。
「おお、よかった。ほんとうによかった。・・・仙女さま、ありがとうございます」
 そして、あのらんぼう者たちはというと、あれからすぐに手や足の動かない病気になったということです。
 おじいさんは大好きな花といっしょに、いつまでもしあわせに暮らしました。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 女性ドライバーの日
きょうの誕生花 → コスモス
きょうの誕生日 → 1970年 羽生善治(将棋棋士)




きょうの日本昔話 → 大仏の目玉
きょうの世界昔話 → 花のおじいさん
きょうの日本民話 → 生きている竜
きょうのイソップ童話 → ハトとカラス
きょうの江戸小話 → 最後のうそ


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9月26日の世界の昔話 ちいさなヘーベルマン


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9月26日の世界の昔話



ちいさなヘーベルマン



ちいさなヘーベルマン
シュトルムの童話 → シュトルムの童話の詳細


 むかしむかし、お月さまがときどき、人間とおしゃべりしていたころのお話です。
 ある夜、お月さまは、ヘーベルマンという名前の男の子を見ていました。
 へーベルマンは、ベッドにはいっているのに、目はパッチリあけて片足を高くあげてます。
 その足にシャツをひっかけて、シャツのそでを両方の手でひっぱって、ふーっと息をふきかけます。
 するとシャツはフワッとふくらんで、風をうけて走る船の帆(ほ)そっくりになりました。
 そのとき、お月さまはちょっぴりサービスしたくなって、月の光をヘーベルマンのまどに投げかけて、月の道を作ってあげました。
 そのとたん、へーベルマンの車つきベッドはフワリとうかび、月の道へとすべり出したのです。
 月の道は町の通りへと続き、ヘーベルマンのベッドは、通りをガラガラと音をたてて走り出しました。
 ヘーベルマンは、それはもう大喜び。
「お月さま。もっとスピードあげてよ」
 そうさけんで、ほっぺをふくらませ、ふーっとシャツの帆をふくらませます。
 ガラガラ、ガラガラと、ベッドの船は走ります。
 夜中の静まりかえった通りをさんざん走りまわると、お月さまが言いました。
「さあ、へーベルマン、そろそろおしまいですよ」
 ヘーベルマンは、お月さまをにらんでいいました。
「やだやだ。まだまだ!」
 へーベルマンは息を吹いて、帆をふくらませ、ベッドの船を森へと走らせました。
 お月さまは、ベッドの船が木にぶつかりやしないかと、ヒヤヒヤしながら月の光で森を明るくてらします。
 けれどヘーベルマンは、お月さまの心配などおかまいなしです。
「おーい、だれが遊ぼうよー」
 でも、動物たちはグッスリねむっていて、起きては来ません。
 お月さまは、言いました。
「ヘーベルマンも、もう帰ってねましょう」
「やだやだ。まだまだ!」
 へーベルマンは、ますます目をパッチリ開けて、森をぬけて、新しい町から知らない村へ、とうとう世界一周走りまわりました。
 ついていったお月さまは、もうヘトヘトです。
「ヘーベルマン、おしまいにしてちょうだい」
「やだやだ。まだまだ!」
 へーベルマンは、大きく大きく息を吸いこむと、ふーっと思いっきりシャツの帆をふくらませました。
 するとベッドの船はいきおいがつきすぎて、ビューと空へ飛んで行きます。
 おどいたのは、夜空にかがやく星たちです。
「キャアー! こわい!」
と、あっちへ逃げこっちへ逃げ、夜空は流れ星だらけでメチャクチャです。
 しかしへーベルマンは、楽しくてたまりません。
 流れ星を追いかけまわして、とくべつに大きな星をつかまえようとしました。
「へーベルマン、今度こそ、おしまい!」
 お月さまがどなりましたが、
「やだやだ。まだまだ!」
 ヘーベルマンは調子(ちょうし)に乗って、お月さまの顔の上をベッドの船で走りぬけました。
 お月さまの顔の鼻の上に、ヒゲが二本つきました。
 ヘーベルマンはそれを見て、ゲラゲラと笑いました。
 お月さまはカンカンに怒って、月明りをパチッと消しました。
 そのとたん、星たちも光るのをやめました。
 たちまち、空はまっくらやみで、何も見えません。
 へーベルマンは、あわててさけびました。
「お月さまー! 出てきてよー! お月さまー!」
 自分の手も足も何も見えなくて、へーベルマンはこわくて泣き出しました。
 すると、空がうっすらと明るくなりました。
「ああ、よかった。また、お月さまが出て来た」
 へーベルマンがニッコリほほえむと、いきなりどなられました。
「わしの空でイタズラするのは、お前だな!」
 それはお月さまではなく、ギラギラと光るお日さまでした。
 お日さまは、やけどするくらいあつい光の手でへーベルマンをつかむと、それっ! と海にむかってなげました。
 ドボーン!
 へーベルマンは、海に落ちました。
「たすけてよー! もう悪いことはしませーん! ちゃんと言うことをききまーす!」
 すると、お月さまがまた出てきて、ヘーベルマンをお家に返してくれたのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ワープロの日
きょうの誕生花 → きくいも
きょうの誕生日 → 1957年 天童よしみ(歌手)




きょうの日本昔話 → キセルおさめ
きょうの世界昔話 → ちいさなヘーベルマン
きょうの日本民話 → 一休さんの、サルの恩返し
きょうのイソップ童話 → ヘラクレスとアテネ
きょうの江戸小話 → 無筆のねがい書


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9月25日の世界の昔話 翼をもらった月


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9月25日の世界の昔話



翼をもらった月



翼をもらった月
ブルガリアの昔話 → ブルガリアの国情報


 むかしむかし、子どもがほしいと、毎晩神さまにお祈りしているおじいさんとおばあさんがいました。
「子どもを一人さずけてください。子どもがいたら、どんなに心強いでしょう。どんなに家の中が明るくなるでしょう。どうか、願いをきいてください」
 ある晩のこと、おじいさんとおばあさんはいつものようにおいのりをして、近くの川にカゴをしかけました。
「今夜カゴをしかけておいて、かかったものをわしらの子どもにしよう」
 二人は、そう決めたのです。
 おじいさんとおばあさんは、流れてゆく小川をながめながら、いつのまにかねむってしまいました。
 そんな二人のようすを、とおくから見ているものがありました。
 それは暗い夜空にかがやく、レモン色の大きな月でした。
 翌朝、小川にしかけたカゴを見て、二人は思わずニッコリとほほえみました。
 カゴには、一羽の子ガモがかかっていたのです。
「かわいい子じゃないか、おばあさん」
 おじいさんとおばあさんは子ガモをだいて帰ると、古いマスの中にそっといれました。
 おじいさんとおばあさんは、
「じゃ、わしらは森にキノコをとりに行ってくるから、しっかり留守番(るすばん)をたのむぞ」
と、ほんとうの子どもに言うように子ガモに言って、出かけて行きました。
 二人が出て行ってしばらくすると、子ガモはマスの中でつばさを三回広げて、
 ガア! ガア! ガア! ガア!
と、四回鳴きました。
 そのとたんに、子ガモは羽をぬいで、美しい娘に姿をかえたのです。
 娘はおばあさんのエプロンをつけると、台所にたって野菜のシチューを作り始めました。
 それからそうじをして、白い布を見つけるとシャツを二枚ぬい、台所をていねいにみがきあげました。
 夕暮れ近くになると娘はエプロンをはずし、三回手をたたきました。
 すると、あっという間に娘は子ガモの姿になり、マスにもどったのです。
 帰ってきたおじいさんとおばあさんは、できたての野菜シチューと、きれいにみがかれた台所を見てビックリ。
 次の日も、おじいさんとおばあさんは、森へ出かけました。
 そして帰ってくると、部屋の中はそうじがしてあり、花がかざってあります。
 台所には、マメのスープと焼きたてのパンがあります。
 その次の日には、クッションが新しくなっているし、ベッドカバーには星のししゅうがしてありました。
 おじいさんとおばあさんは、ベッドの中で話しました。
「明日、出かけるふりをして屋根からそっと見てましょうよ。屋根には小まどがありますから、家の中のようすが見えますよ」
「ああ、そうしてみよう」
 朝が来ると、おじいさんとおばあさんは森へ出かけるふりをして、決めたとおりに屋根にのぼって部屋の中を見ていました。
 子ガモはそうとは知らずに、三回羽を広げると、
 ガア! ガア! ガア! ガア!
と、四回鳴いて、羽をぬいで美しい娘になりました。
 娘はおばあさんのエプロンをつけると、さっそく台所にたって料理を始めました。
 それからそうじをして、おじいさんの机をみがき、おばあさんのやぶけたボウシをつくろいました。
 屋根の上のおじいさんとおばあさんはビックリです。
「そうか、そういうわけだったのか。あの娘が夜もずっと、娘のままでいてくれたらいいのになあ」
「そうだ、おじいさん。あの娘のカモの羽を全部焼いてしまいましょうよ。そうしたら、あの娘はカモの姿にかえることができなくて、ずっと娘のままでいますよ」
「そうだな。よし、そうしよう」
 おじいさんとおばあさんは屋根を下り、家の中へそっとはいりました。
 そして娘が庭に出たすきに、二人は子ガモの羽を暖炉(だんろ)の火に投げ込みました。
 そこへ、用事をすませた娘がはいって来ました。
「あっ、おじいさんにおばあさん!」
 ビックリする娘に、おじいさんがやさしくいいました。
「カモや、・・・いや娘や、カモの羽は全て焼いてしまったよ。これでもう、お前は娘の姿のままだね」
 おじいさんの言葉に、娘は焼けていく羽を見てひめいをあげました。
「なんてことをするのですか!」
 それから悲しそうな顔をして、おじいさんとおばあさんに言いました。
「実は私は月なのです。お二人が毎晩、子どもがさずかりますようにとおいのりをしているのを見ていて、昼間だけでも子どもの役目をしようと、子ガモの姿をかりておりて来ました。けれど私は月です、夜には空へ帰らなければなりません。でもつばさがないことには、空にもどることはできません」
「おお、それは知らなかった。月が夜空をてらしてくれなければ、夜はやみにつつまれてしまう。どうしたらいいんだ」
 オロオロしながらおじいさんとおばあさんが聞くと、娘は言いました。
「森へ行って、森じゅうの鳥の羽を一本ずつもらってください。その羽を持って、チレリイの谷に住む魔法使いのおばあさんのところへいき、もう一度カモの羽のつばさを作ってもらってください。私はカモのつばさができあがるまで、森のほら穴にかくれています」
 おじいさんとおばあさんは、急いで森へ出かけて行きました。
 そして出会った鳥に、羽を一本ずつわけてもらいました。
 でも、おしゃれなセキレイ(→スズメ目セキレイ科の小鳥の事)だけは、
「どうしても私の羽がほしいのなら、真珠(しんじゅ)の首かざりをちょうだい」
と、言います。
 真珠なんて持っていないおばあさんは、悲しくて涙を流しました。
 すると、その涙は草の上に落ちたとたん、二粒の真珠になりました。
 おじいさんとおばあさんは草をあんで、その真珠をつけて首かざりを作ってセキレイにわたしました。
 せきれいは首のわた毛を一本、ぬいてくれました。
 そうして二人はチレリイの谷へ急ぎ、魔法使いのおばあさんに、カモのつばさを作ってくれるようたのみました。
 魔法使いのおばあさんは、二人が勝手に子ガモのつばさを焼いてしまったことを、ひどく怒りました。
 でも、涙を流しながらたのむので、
「今度だけだよ」
と、いいながら、子ガモのつばさを作ってくれました。
 おじいさんとおばあさんは、子ガモのつばさを大事にかかえて、娘のいるほら穴へむかいました。
 夜空は月がなくてまっ暗だったので、おじいさんとおばあさんは途中で何度もころび、木に頭をぶつけました。
 そしてようやくほら穴にたどりついたときには、おじいさんもおばあさんもクタクタです。
 でも元気を出して、ほら穴にむかって言いました。
「つばさを作ってもらいましたよ」
 すると娘は、ニッコリほほえみながら出てきました。
 そしてすぐに両手を三回ふると、ガア! ガア! ガア! ガア!と、四回鳴いて、つばさを受け取りました。
「あっ!」
 娘はたちまち、美しいカモの姿にかわりました。
 それからつばさを広げると、暗い夜空へかがやきながらとんでいったのです。
「月が、月が出たよ」
 まっ暗だった夜の空に、突然大きな月がうかびあがりました。
 それは、今まで誰も見たこともないような、とても美しい月でした。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 10円カレーの日
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きょうの誕生日 → 1981年 MEGUMI(タレント)


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9月24日の世界の昔話 にじのお城


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9月24日の世界の昔話



にじのお城



にじのお城
インドネシアの昔話 → インドネシアの国情報


 むかしむかし、ある川のほとりに、にじのお城がたっていました。
 そのお城には、わかい水の神が住んでいました。
 けれどもこのお城は、人間の目には見えません。
 ある日のこと、水の神は、川むこうのりっぱなお城に目をとめました。
 お城のまどぎわで、それはそれは美しいお姫さまが、はたをおっていたのです。
 水の神は、ひと目でそのお姫さまがすきになりました。
 それからというもの、くる日もくる日も、川むこうのお城のまどぎわを見つづけました。
 けれども美しい姫は、一度もこちらをむきません。
 いつになっても、こっちをむいてくれないので、水の神は悲しくなって、涙をはらはらと流しました。
 その涙で、川の水がふえました。
 すると川のさざなみが、姫のお城にうちよせました。
 それでも姫は、すこしもこちらを見てくれません。
 そこでとうとう、水の神は金色のチョウになって、姫のいるまどぎわにとんでいきました。
 そして姫のそばをヒラヒラとまいながら、そっといいました。
「花むこさんが、まっています」
「え、花むこさんですって?」
 姫は思わず、顔をあげました。
 でも、チョウチョウはもう、どこかへとんでいってしまいました。
 ところがこれを、わるい男に聞かれてしまいました。
 ナシマンという、姫の乳母(うば)の息子が、ちょうどまどのそとを通りかかったのです。
「おっかさん。姫がおむこさんをさがしている。おむこさんにはおれがいいと、つたえてくれ」
と、ナシマンは、母にたのみました。
「とんでもない。わたしだって、おまえはどうしようもない男だと思っているんだからね」
「だけど、おれはどうしても、姫をお嫁さんにしたいんだ。たのむよ。いやだっていうなら、姫もおっかさんも、どうなるかわからないぞ!」
 乳母はしかたなく、姫にこういいました。
「お姫さま、よいおしらせがございます。きょうの昼すぎ、お姫さまをおしたいしているお方がまいります。それはそれは、りっぱなお方でございます」
 そのとき、チョウチョウがへやにまいこんできました。
 乳母は、つづけていいました。
「そのお方は、お姫さまのおむこさまにふさわしいお方です。おきめになるのが、よろしゅうございます」
 するとチョウチョウが、姫の耳のそばでいいました。
「ふさわしい方ではありません。それはわるものです。ほんとうのおむこさんをおまちなさい」
 そこで、姫は乳母にいいました。
「わたくし、もっとふさわしいお方がくるまで、まつことにしましょう」
 すると乳母は、こわい顔で言いました。
「お姫さま。きょう来る方におきめなさいませ。さもないと、あなたさまもわたくしも、命がないかもしれません」
 これを聞いて、姫はまっさおになりました。
「では、その方につたえておくれ。四、五日考えるあいだ、川むこうの岸でおまちくださいと」
 このことは、すぐさまナシマンにつたえられました。
 ナシマンは、川のむこう岸に食べ物を持っていって、姫の返事をまつことにしました。
 さて、ちょうどこの日、水の神は一番信用している白カラスをよんで、手紙と小箱をわたしていいました。
「これを、川むこうのお城の美しい姫にとどけておくれ。とちゅうで、より道をしないでな」
 白カラスは、手紙と小箱を背中にしっかりとくくりつけると、
「ごあんしんください。かならずおとどけいたします」
と、いって、とんでいきました。
 ところが川岸までくると、さかなを焼くおいしそうなにおいが、プーンとただよってきました。
 くいしんぼうのカラスは、思わず近づくと、
「もしもし、ひとくちわけてください」
と、さかなをたべている男にたのみました。
「なんだおまえは? 背中に、そんな箱をしょったりして」
と、その男はカラスをにらみつけました。
「川むこうのお姫さまにとどける、だいじなおくりものなのです」
と、カラスはいいました。
 それを聞くと、男はきゅうにニコニコして、
「さあ、たべなよ。えんりょうはいらない。それから、その箱をおろしたらどうだ。おれが見はっていてやるよ」
「これは、どうもご親切に」
 カラスは箱をおろして、さかなをムシャムシャとたべはじめました。
 そのすきに、男は箱のふたをあけて、中にはいっている美しい真珠(しんじゅ)や宝石をとりだすと、そのかわりに大きなクモとトカゲをいれておきました。
 その男は、ナシマンだったのです。
 ナシマンは母にたのんで、手紙をかきかえてもらいました。
 こうしているあいだも、くいしんぼうのカラスはさかなをたべつづけていました。
 やがて、すっかりまんぷくになったカラスは、手紙と小箱をお姫さまにとどけました。
 姫は、これこそほんとうに自分を愛しているお方からのおくりものだとおもい、胸をおどらせて手紙をよみました。
 ところが、どうでしょう。
《姫よ。おまえは、きたなくてみにくい女だ。箱の中のおくりものは、おまえにふさわしいかざりものだ》
と、かいてあるではありませんか。
 姫はおどろいて、小箱をまどのそとへほうりだしました。
 とたんにふたがあいて、中から大きなクモとトカゲがはいだしてきました。
「ああ、なんてことなの!」
 姫は、心のそこから悲しみました。
 その晩、いつかの金色のチョウチョウが、お姫さまの部屋へ入ってきました。
 そして、耳のそばでささやきました。
「姫よ。おくりものはお気にめしましたか? なぜ、身につけないのです?」
 これを聞くと姫はおこって、チョウチョウをぶとうとしました。
 するとチョウは、
「姫よ、あす、そのお方がまいります。そして姫を、にじのお城におつれします」
 姫はおつきをよぶと、このチョウチョウを追いだしてしまいました。
 水の神は姫のひどいやりかたにすっかり腹をたてて、その夜のうちに大水をおこしました。
 姫の王国は、たちまち水にのまれて、お城も、姫も、人びとも、はげしい流れにおし流されてしまったのです。
 水の神はこのありさまを、にじのお城の前にたって、ジッと見つめていました。
 このとき、波まから乳母がさけびました。
「みんな、わたしたちがわるいのです! 手紙をかきかえたのはわたしです! 箱の中味をかえたのはナシマンです!」
 水の神には、はじめてなにもかもがわかりました。
 そこで、いまにもしずもうとするお城から、姫や人びとをたすけだしました。
 けれども、乳母とナシマンだけは、そのまま流されていきました。
 このとき白カラスも、より道をしたばつとしてまっ黒にされ、カアカアとしかなけなくなってしまいました。
 やがて水の神は、姫とにじのお城で結婚式をあげました。
 二人はいまでも、にじのお城でしあわせにくらしています。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 清掃の日
きょうの誕生花 → はぎ
きょうの誕生日 → 1946年 田淵幸一 (野球)




きょうの日本昔話 → ウリぬすびと
きょうの世界昔話 → にじのお城
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9月23日の世界の昔話 ものしり博士


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9月23日の世界の昔話



ものしり博士



ものしり博士
グリム童話 → グリム童話の詳細


 むかしむかし、クレープスという名のまずしい百姓がいました。
 クレープスは二頭のウシをつかって、車にいっぱいのたきぎを町ヘはこびました。
 そしてそれを二ターレルで、ある博士に売ったのです。
 百姓にお金をはらうとき、博士はちょうどごはんを食ベていました。
 百姓は博士がおいしいものをのんだり食べたりするのを見て、とてもうらやましくなってきました。
(博士になると、こんなにおいしいものが食べられるのか)
 そこで百姓は、じぶんも博士になることができるかとたずねました。
「おお、なれるとも」
と、博士はかんたんにいいました。
「博士なんて、すぐになれるさ」
「では、どうしたらいいのかね?」
「まず、ABCの書いてある本を買いなさい。それは、表紙にオンドリの絵がかいてある本だよ。つぎに、きみの車と二頭のウシを売って、その金で服を買うんだな。それから、ほかにも博士に入り用なものをね。三番目に、『わたしはものしり博士である』と書いた看板(かんばん)をつくらせたまえ。そして、きみの家の戸口にくぎでとめるんだよ。あとはそうだな、なにをきたれてもどうどうとして、博士らしくしていればいい」
 百姓は、博士からいわれたとおりにしました。
 こうして百姓が博士のまねをはじめてから、いくらもたたないうちに、ある金持ちの金がぬすまれました。
 みんなは金持ちに、ものしり博士の話をしました。
 その人はこれこれいう村に住んでいて、きっとその金がどこにいったかを知っているにちがいありませんと。
 そこで金持ちは、さっそくウマに車をつながせて、その村にでかけていきました。
 そして百姓にむかって、ものしり博士かとたずねました。
「そのとおり、わたしがものしり博士です」
「では、わたしといっしょにいって、ぬすまれた金をもういちどとりもどしてください」
「よろしい。しかし、妻(つま)のグレーテもいっしょにつれていかなくてはなりません」
「ああ、いいですよ」
 それからみんなは、いっしょにでかけました。
 みんなが金持ちの家につくと、食事の用意ができていました。
 そこでまず、いっしょにごはんを食ベることになりました。
 そしてそこヘ、一番目の召使い(めしつかい)が、ごちそうのはいった大ざらをはこんできました。
 すると百姓は、おかみさんをつついていいました。
「グレーテ、あれが一番目のだ」
 それは、あれが一番はじめのごちそうをもってきた人だという意味だったのです。
 けれども召使いのほうでは、「あれが一番目のドロボウだ」と、いっているのだと思いました。
 しかも、その召使いが本物のドロボウでしたので、おそろしくなってきました。
 そして、ヘやから出るとなかまにいいました。
「あの博士はなんでも知っている。まずいことになっちまったぞ。やつは、ぼくのことを一番目のだとぬかしたんだ」
 そこで二番目の召使いは、ヘやに入るのがいやでたまりません。
 でも、入らないわけにはいきません。
 次の召使いが大ざらをもってはいってくると、百姓はおかみさんをつついていいました。
「グレーテ、あれが二番目のだ」
 この召使いも、おなじようにおそろしくなってきました。
 そこで、はやくへやからとびだしました。
 そして、三番目の召使いが入ったときも、百姓はいいました。
「グレーテ、あれが三番目のだ」
 さて、四番目の召使いは、百姓がいつ自分たちが犯人だというか、こわくてこわくてたまりません。
 そこで、ものしり博士にむかって、そとまできてくれるようにと目くばせしました。
 百姓がそとにでると、召使いたちは四人とも、金をぬすんだのはじぶんたちだと白状しました。
 そして、
「もしあなたがつげ口さえしなければ、ぬすんだ金をそっくりかえすばかりか、たんまりお礼をします。さもなくば、わたしたちの命にかかわります」
と、いったのです。
 それから四人は、百姓を金のかくしてあるところヘ案内していきました。
 よろこんだものしり博士は、もういちどテープルにつきました。
 そしていいました。
「ご主人。いまから本をつかって、どこに金がかくされているかさがしてみましょう」
 けれども、五番目の召使いは暖炉(だんろ)にもぐりこんで、ものしり博士がもっとたくさんほかのことがわかるかどうか、きいてみようとしました。
 博士はすわったまま、ABCの本をひらきました。
 そして、あちこちめくってオンドリをさがしました。
 でも、なかなか見つからないので、いいました。
「おまえはなかに入っている、でてきなさい」
 すると暖炉のなかにいる召使いは、じぶんのことをいうのだと思いました。
 そして、ひどくおどろいてとびだすと、大声でいいました。
「この人は、なんでも知っている!」
 ものしり博士は、金持ちに金がどこにあるかを知らせました。
 けれども、だれがぬすんだかはいいませんでした。
 こうして、ものしり博士は両方からたくさんの金をお礼にもらいました。
 そして、とても名高い男になったのです。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → テニスの日
きょうの誕生花 → ひよどりばな
きょうの誕生日 → 1969年 鈴木杏樹(俳優)


きょうの新作昔話 → 徳利(とっくり)の又吉(またきち)
きょうの日本昔話 → ネコの茶碗
きょうの世界昔話 → ものしり博士
きょうの日本民話 → 山おくのふしぎな家
きょうのイソップ童話 → 旅人とたきぎの束
きょうの江戸小話 → 大黒さまのちえ


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9月22日の世界の昔話 ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じ込められた話2


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9月22日の世界の昔話



ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じ込められた話2



ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じ込められた話2
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話の詳細


 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは「ほらふき男爵」とよばれておる。
 以前、魚に飲み込まれたときの話をしたが、魚と言えば、もっと大きな魚に飲み込まれたこともあるぞ。
 なんとその魚は島のように大きく、わがはいは船ごと飲み込まれてしまったのじゃ。
 その魚の腹の中は、ジメジメしていておまけにまっ暗。
 とても気味が悪かったぞ。
 だが、わがはいはゆうかんに腹の中を探検してみた。
 すると、なんと世界中の人々が船ごと飲み込まれているではないか。
 わがはいはさっそくみんなを指揮(しき)して、一番大きい船の帆柱(ほばしら)を二本つなぎ合わせた。
 そして魚が口を開けるのを待って、魚の口が開いたすきにみんなでその帆柱をつっかい棒にしたのじゃ。
 わがはいの作戦は見事に成功。
 われわれ全員は、35せきの船に乗って、無事に大きな魚の腹から逃げ出したのだ。
 どうだ、すごかろう。
 なに? どうせほら話だと。
 しつれいな。
 わがはいの一族は、正直者で有名なのだよ。
 まあ、ちょっとだけ話が大きくなることもあるが。
 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → 国際ビーチクリーンアップデー
きょうの誕生花 → せんにちこう
きょうの誕生日 → 1983年 今井絵理子(歌手)




きょうの日本昔話 → ノミの宿
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じ込められた話2
きょうの日本民話 → ガンの悲しみ
きょうのイソップ童話 → 乳しぼりの女
きょうの江戸小話 → なぎなたっ屁


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9月21日の世界の昔話 ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じこめられた話


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9月21日の世界の昔話



ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じこめられた話



ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じこめられた話
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話の詳細


 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは「ほらふき男爵」とよばれておる。
 きょうは、わがはいがあやうく命を落としかけたときの話をしよう。
 フランスは、マルセーユ近くの海で泳いでいた日のことじゃ。
 ふと気がつくと、波を立てて巨大な魚が大口を開けておそってきた。
 わがはいは、あっというまに飲み込まれてしまった。
 わがはいは魚の胃袋の中で、けったり、飛びはねたり、スコットランドのダンスをおどりまくっりしてやった。
 あんのじょう、魚のやつはビックリ。
 なにしろ自分の胃が勝手にあばれだしたのだからな。
 それで、巨大魚があばれているの見つけたイタリア人の猟師たちが、モリを打ちこんで魚をしとめてくれたんじゃ。
 イタリア人たちは魚を甲板に引きあげると、
「腹を切って、油をとろう」
と、いっておる。
 わがはいは、いっしょに切られてはたまらんと、魚の胃の中から大声をあげたんじゃ。
「腹を切るのはやめろ! 中には人が入っているのだぞ。それよりもさかなの口からナイフを投げ入れろ。わがはいはそれを使って出ていくから」
 いやはや、わがはいが魚の腹から出てきたときの、やつらの驚きようといったらなかったぞ。
 ともかく無事助かったおかげで、今、こんなおしゃべりをしておれるわけじゃ。
 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。


おしまい


きょうの豆知識と昔話


きょうの記念日 → ファッションショーの日
きょうの誕生花 → くず
きょうの誕生日 → 1950年 松田優作(俳優)


きょうの新作昔話 → 泥棒を治す、赤ひげ先生
きょうの日本昔話 → おんぶおばけ
きょうの世界昔話 → ほらふき男爵 怪魚のお腹に閉じこめられた話
きょうの日本民話 → 鯛女房
きょうのイソップ童話 → メンデレス川の岸のキツネたち
きょうの江戸小話 → ごゆっくり


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